出典: Technical Readout: 3060
TSG-9H ティ・ツァン
重量: 60t
シャシー: SLスペシャル
パワープラント: 360ヘルメスXL
巡航速度: 65km/h、76km/h with/TSM
最高速度: 97km/h、119km/h with/TSM
ジャンプジェット: シェヴロンI
ジャンプ能力: 180m
装甲板: デュラレックス・ヘビー
武装:
5×ディヴァース・オプティックス 射程延長型中口径レーザー
4×ディヴァース・オプティックス 射程延長型小口径レーザー
製造元: セレスメタルズ・インダストリー(セレス金属重工)
主製造工場: カペラ
通信システム: セレスコム・モデル21-Rs
照準・追尾システム: Cアップル・チャーチル
TSG-9H ティ・ツァン 技術基盤: 総重量: 機体中枢: エンジン: 歩行MP: 走行MP: ジャンプMP: 放熱器数: ジャイロ: 操縦席: 装甲値: |
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重量 |
頭部 胴中央/背面 左右胴/背面 左右腕 左右脚 |
中枢値 |
装甲値 |
武器・弾薬
種別 ハチェット 2×ER中口径レーザー 2×ER中口径レーザー ER中口径レーザー 4×ER小口径レーザー TAG TSM ジャンプジェット×2 ジャンプジェット ジャンプジェット ジャンプジェット×2 |
部位 右腕 右胴 左胴 左腕 左腕 胴中央 左胴/右胴 左脚 左胴 右胴 右脚 |
装備欄数 |
重量 |
概要:
第4次継承権戦争の終結時、カペラ大連邦国はその国土の半分を侵略者達に対して失った。戦争開始以前には150個以上が存在していた正規兵の大隊と傭兵の大隊も、65個大隊が完全に破壊され、更に、46個大隊が捕われるか離反するかをしていた。かようなカペラ領土の余りにも広大な刈り取りにより、恒星連邦軍(AFFS)のジャガーノート達はこの国家自身のプライドも破壊したのであった。
3052年にスン=ツー・リャオが玉座へと就いた時、彼は即座にカペラ大連邦国の強力な国家としての名声を、他の大王家の眼から見てのものだけではなく自らの市民達の心に対しても復興させるべく、幾つかのプログラムを開始した。これらのプログラムで最新かつ最も重要なものが、新たなる誕生を意味する“シン・シェン”(新生)運動である。そして、自身の新・星間連盟首長としての地位を利用し、スン=ツー・リャオは自らの人民達に対して“明白なる神意”を説く事を開始したのであった。
この努力の助けとする為に、近年、スン=ツーはリャオ家の精髄の典型を作る事を意図して一連の新型バトルメックの製作を命じた。これらの設計の最初のものは、明瞭に日本的な作品である事を(そのデザインで)見せ付けているドラコ連合の一連のメックと同様に、そのメックの装甲にうまく明白な中国様式の雰囲気を収めている。そして、リャオ首相は、この新たな機体に、胎蔵界の菩薩にして“イェン・ロー・ワン”(閻羅王)の主でもある“ティ・ツァン”(地蔵)の名を付けたのであった。
性能:
この“ティ・ツァン”は、格闘用に設計された武器――“斧”を装備したメックへのカペラ大連邦国の最初の試みである。“スカラバス”、“ナイトスカイ”、“バーサーカー”、同様に古き“ハチェットマン”、“アックスマン”等のバトルメックの成功により、リャオ首相は自身の軍用にそれらと同じ系列のメックを作る事を望んだのであった。
自由世界同盟からの兵器の購入を重度に頼みにして、この“ティ・ツァン”は多量の射程延長型中口径レーザー/小口径レーザーを搭載しており、それは機体に近距離での猛烈な一斉射撃の火力を与えている。しかしながら、カペラ大連邦国はそれらの兵器を購入するのに問題を抱えているであろう――その利害関係と自由世界同盟の悪化により。
この新型メックの最も衝撃的な特徴は、恒星連邦によって開発された技術である3重強化筋肉の包含である。このメックの新登場を公表する演説の中で、スン=ツーは言った――「過去の我々の恐怖の象徴を克服する時だ。――第4次継承権戦争の際に、我々が騙されて不完全なマイアマーを使用した事は、周知の事実である。この事は、我々の最大の屈辱的な敗北が、全ての大王家の歴史書に記載されるのを助けるものとなっている。だが、このバトルメックにより、我々は失敗の悪霊を克服し、そして、我々の神意を果す為に我々は存在する如何なる道具も使用する意志を有している事を、我々の敵に見せつけるであろう」
配備:
最初の“ティ・ツァン”は、セントアイヴズ協定の国境に駐屯しているカペラの部隊に引き渡された。また、1機が、近年にカペラ大連邦国の正規部隊となった傭兵部隊である第4タウ・ケチレンジャーズに贈られている。
派生型:
現在使用されている唯一の派生型は、“ティ・ツァン”の長距離兵器の欠如(の欠点)を取り除いたものである。この9J型は、胴中央に射程延長型大口径レーザーを搭載する重量を確保する為に、両胴の射程延長型中口径レーザー、左腕から2基の射程延長型小口径レーザー、TAG、ダブル・ヒートシンク1基を取り外している。
私的解説:
「カペラ大連邦国は滅びてはいない。……そして、我々を滅ぼせなかったものは何であっても、我々を更に強くするものになるであろう」
―3052年、スン=ツー・リャオの発言
第4次継承権戦争後半に、カペラ大連邦国は恒星連邦の研究施設を襲撃し、3重強化筋肉技術の奪取に成功しました。そして、時のカペラ大連邦国首相であったマクシミリアン・リャオは破滅的な様相を呈している戦況を一挙に打開する切り札として、イマーラ家を始めとした自身のエリート・メック部隊にこれを装備させる事を技術者達に命じました。技術者達は首相の命令に良く応え、僅か数ヶ月で3重強化筋肉の複製と生産に成功し、5個連隊近くのメックに装備する事を為し遂げました。恐らく、このメック部隊が全力を発揮すれば、恒星連邦に占領されたカペラ領土の1/3――サーナ共和区ぐらいは奪還できたかもしれません。しかしながら……。
3029年、10月、カペラ大連邦国の首星である“シーアン”に第4タウ・ケチレンジャーズを装ったダヴィオン軍が降下、現地を守備していたイマーラ家の部隊と激しい戦闘になるかと思われました。しかし、会戦に先立ってダヴィオン軍が撒いた“グリーン・スモーク”にイマーラ家のメックが触れた途端、装備していたその3重強化筋肉が炎上し始めました。そう、カペラ大連邦国が奪取した3重強化筋肉は不完全版で、ハンス・ダヴィオンは彼等にわざとそれを盗ませて装備させたのです。イマーラ家の部隊は雄々しく侵略者に立ち向ったものの、マイアマーが次々と燃えていくのを前にしては彼等の並外れた技量/精神力を以ってしても如何ともし難く、モーガン・ハセク=ダヴィオンとアンドリュー・レッドバーンの前にメックの残骸を積み上げるのみという結果に終りました。戦闘の終了後、惑星“シーアン”には60機近くのメックの残骸が転がり無残な姿を晒していました。更に、マクシミリアン・リャオは自分の娘が裏切り者と一緒に逃亡した事と、自分がハンス・ダヴィオンの策略に完全に引っ掛かっていた事を悟ると、どうしようもない屈辱感と敗北感から精神の平衡を失い政務を執る事が不可能になり、以後どんどん精神を病んでいきました。また、第4次継承権戦争の終結後に、軍の再編制が開始されましたが、軍首脳部が最初に下した命令は、不完全版3重強化筋肉を装備したメックから全ての3重強化筋肉を取り外し、通常のものに交換するという気の重くなるものでした――何しろ、首相命令のお蔭で、不完全版3重強化筋肉を装備したメックは約400機も存在していたのですから……。(蛇足ですが、この作業が終るまで、カペラ大連邦国の可動メック戦力は、7個連隊程まで減少していました。これからしばらく後に起きたアンドゥリエン公国とカノープス統一政体のカペラ大連邦国への侵攻は、必然とも言えるものですね)
一方、技術者達にとっても、この不完全版3重強化筋肉の事件は、重い敗北感を伴うものでした。伝統的に、カペラの技術者達は、他国の技術をコピーして自分達のものにするのに絶対の自信を持っていました。しかし、それが、打ち砕かれたのです。技術者達は3重強化筋肉の欠陥を見抜けず、むざむざと敵に名を揚げさせてしまいました。それ故に、これ以後、彼等は3重強化筋肉をものにするのに異常に拘り続ける事となりました。自分達の技術的な敗北を乗り越える為にも、それは必要だったのでしょう。そして、約20年後、彼等の努力は実り、“ティ・ツァン”がその完成形となりました。
“ティ・ツァン”は色々な面から見て、過去の敗北を克服したカペラ大連邦国の再興と栄光の未来を象徴するメックと言えるでしょう。