出典: Experimental Technical Readout: Succession Wars

GRF-2N-X スーパーグリフィン

実地試験要約: プロトタイプ・グリフィン・シャシーの改修とテストベッド
製造者/場所: フリーデン航空宇宙廠、ホフ
監督技術者: ジョージ・ベラスコ博士
計画開始年度: 3020年
非製品版装備分析: 試作型“フリーザー”放熱器、プロトタイプ・インプルーヴド・ジャンプジェット

GRF-2N-X スーパーグリフィン
技術基盤:
総重量:
機体中枢:
エンジン:
  歩行MP:
  走行MP:
  ジャンプMP:
放熱器数(フリーザー×5):
ジャイロ:
操縦席:
装甲値:


中心領域(エクスペリメンタル)


240



15[20]


160

重量

60.0
6.0
11.5



5.0
3.0
3.0
10.0


頭部
胴中央/背面
左右胴/背面
左右腕
左右脚

中枢値

20
14
10
14

装甲値

24/7
22/6
14
18


武器・弾薬
PPC
LRM10
弾薬(LRM)24
小口径レーザー
中口径レーザー
プロトタイプ・インプルーヴドJJ
プロトタイプ・インプルーヴドJJ
部位
右腕
右胴
右胴
胴中央
左腕
右胴
左胴

装備欄数






重量
7.0
5.0
2.0
0.5
1.0
3.0
3.0


概要:
 このスーパーグリフィン・コンセプトは惑星“ホフ”に於けるNAISの実験活動の頂点であり、スーパーワスプよりも多くのプロトタイプ技術を持つのがその特徴となっている。中量級のその原型機に似て見える様に設計されたカスタムの60tシャシーを基礎にして作られたこのスーパーグリフィンの外見は、観測者気取りの者達を混乱させ注目を集めさせない事を意図して努力した結果のものである。
 その追加された重量はスーパーグリフィンの技術者達に1基の中口径レーザーと小口径レーザーで以てその近接防御力を増大させる事を可能にし、また、このメックのスターシールドA装甲はその胴体全体の防御力を向上させてもいる。そのコアテック275核融合エンジンは、240出力のピットバンにダウングレードされている。しかし、これはメックの地上速度を低下させているものの、それで浮いた重量はダヴィオンの技術者達にこの設計に於ける最大の変更を加える事を可能にさせたのである。
 スーパーグリフィンは、プロトタイプの2倍効果放熱器に対するNAISの最初の取り組みに於けるテストベッドとして役立った。重量と体積をそのままにするべく、それらの“フリーザー”にはアドヴァンスト・ラジエーターではなく揮発性の液体金属の冷却材が使用されており、その効率性は増大したが、それは戦場にて整備維持をするには余りにも危険かつ困難なものであるのを証明する事となった。そして、数年間という僅かな時で交換が必要となるというその推定寿命の所為で、それらの“フリーザー”はヘルム・メモリーコアから復活した星間連盟技術放熱器で以て最終的には置き換えられる事になるのである。しかしながら、ホフ戦役が勃発した時に於いては、それらの“フリーザー”は革命的な存在であった(実際、スーパーグリフィンの初期試験でのその有望な結果に基づき、エリダニ軽機隊のライトニング中隊のメック達は改造されて同様の“フリーザー”が取り付けられ、それらはジョンストン農場での戦闘に於いてブラック・ウィドウに対して大いに活用される事となった)
 しかしながら、スーパーグリフィンの最も野心的な改良点は、その試作型のインプルーヴド・ジャンプジェット・システムである。当時の構造的限界を越えて機動力を向上させるべく開発された、それらのスーパーパワー・ジェットは、書類の上では素晴らしく見えるものであり、スラスター重量をそれ程増大させる事なく大いに向上した機動力を与えるものであった。しかし、それは極めて高いレベルの熱を発生させるものであり、損傷を受けた際に激しい爆発を起こす傾向があるものでもあったのである。
 3022年、5月13日、スーパーワスプと共に、唯一の稼働するプロトタイプのスーパーグリフィンは戦闘に投入された――そして、それは良い働きはしなかった、戦闘ROMは、かのメックがその長大なジャンプ距離を活用してブラック・ウィドウのライフルマンを奇襲して強力な攻撃を行ったが、ライフルマンとその僚機のフェニックスホークからの反撃砲火がスーパーグリフィンの右胴を貫通しそこに搭載されていたジャンプジェットに打撃を与えた事を示している。それによる爆発はLRMの弾倉を誘爆させ、かのメックを完全に破壊したのであった。




私的解説:

 スーパーグリフィンは、シナリオ集“ブラック・ウィドウ”に登場したユニークなメックです。実は、原書版ではスーパーグリフィンは60tメックで、ジャンプMPが9もあるとんでもない性能のメックになっていました。何故、この様な事になったかと言いますと、当時(1985年)のルールではメックへの基本MPによるジャンプジェットの搭載数制限がなく、しかもメックの総重量に関係なく一律で1基辺りの重量が0.5tとなっていた為です。故に、スーパーグリフィンは9基ものジャンプジェットを搭載できたのでした。そして、これ以外にもルールを逸脱している箇所がスーパーグリフィンにはあります。例えばそのエンジンはコアテック275を搭載したままでしたし、右胴と左胴に装甲限界を無視して1点多く装甲を積んでいたりもしました(他にダブルヒートシンクとシングルヒートシンクの混載禁止のルールにも抵触しています――後にフリーザー放熱器の設定の登場でこれは問題ではなくなりましたが)
 こうしたルール的なイリーガル要素の塊であるスーパーグリフィンは、日本語版ではローカライズの際に当時のルールに合致する様に修正された上で掲載される事となります。戦闘シナリオを遊ぶだけなら問題ないのですが、後々に面倒な議論を呼ぶ事になる存在だったでしょうから、この修正は個人的には妥当なものだったと思います。
 その後、スーパーグリフィンはテクニカル・リードアウトにも未収録で長い間放置(バトルテック・ラインディベロッパーのランドール氏やハーバート・ビーアス氏は過去に、「先人達のワークを尊重する為と敢えてそれをする必要性がない為、スーパーグリフィン等々の修正&TR掲載は行うつもりは当面はない」とのコメントを残しています)されていましたが、2012年に発売されたテクニカル・リードアウトにてまさかの17年越しの修正と正規収録がされて日の目を見る事になりました。この修正版ではプロトタイプ・インプルーヴド・ジャンプジェットが装備されていたとの設定がされ、オリジナル版に近い性能がほぼ再現されています。3020年代に欠陥のあるプロトタイプとはいえインプルーヴド・ジャンプジェットの開発をしていたNAISの技術力は評価されるべきでしょう。残念ながら、“ホフ”での敗北で研究にダメージを受けた為にそれは放棄されてしまいましたが。テクニカル・リードアウトの文からすると、正史ではスーパーグリフィンに止めを刺したのはブラック・ウィドウのジョニー・クレイヴェルとピエト・ニコルスという事になっています。現実で20年近い時を経て、この様なちょっとした小話が出てくるのは面白いものですね。

 バトルテックのボードゲーム上では、スーパーグリフィンは見掛け程は強力な存在ではないと思います。そのプロトタイプ・インプルーヴド・ジャンプジェットの機動力は頼もしいものですが使用時の発熱が大きく、最大ジャンプをしてPPCを射撃した場合はフリーザー放熱器による放熱能力を超過した熱を軽く発生させてしまいます。また、スーパーグリフィンの装甲や兵装は通常型のグリフィンと大差はなく、爆発する可能性のあるジャンプジェットという危険物を両方の側の胴に搭載している為にラッキーヒットで致命傷を受けてしまう可能性は通常型よりも増えているかも知れません。スーパーグリフィンの運用の際にはその見掛けの性能への過信をせず、通常型グリフィンの基本戦法を守った戦いをすべきでしょう。

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