出典: BattleTechnology Issue #4、Record Sheets 3025

BNC-3S バンシーS

重量: 95t
シャシー: スターリーグXT
パワープラント: ピットバン285
巡航速度: 32.3km/h
最高速度: 53.8km/h
ジャンプジェット: 無し
ジャンプ能力:
装甲板: スターシールド

武装:
  1×インペレーターB オートキャノン
  1×マグナ・ヘルスター PPC
  1×ドナル PPC
  1×ハープーン SRM−6ラック
  4×マグナMk.II 中口径レーザー
  2×マグナMk.I 小口径レーザー

製造元: スターリーグ・ウェポンリサーチ/デファイアンス・インダストリーズ
通信システム: ダルバン・コムライン
照準・追尾システム: ダルバンHiRez-B

BNC-3S バンシーS
技術基盤:
総重量:
機体中枢:
エンジン:
  歩行MP:
  走行MP:
  ジャンプMP:
放熱器数:
ジャイロ:
操縦席:
装甲値:


中心領域


285ピットバン



22


240

重量

95.0
9.5
16.5



12.0
3.0
3.0
15.0


頭部
胴中央/背面
左右胴/背面
左右腕
左右脚

中枢値

30
20
16
20

装甲値

40/17
30/10
21
26

武器・弾薬

種別
AC/10
弾薬(AC)10
PPC
PPC
SRM6
弾薬(SRM)15
中口径レーザー
中口径レーザー
中口径レーザー
中口径レーザー
小口径レーザー
小口径レーザー
部位
左胴
左胴
右胴
左腕
右胴
右胴
右腕
右腕
胴中央(背面)
胴中央(背面)

右胴

装備欄数











重量
12.0
1.0
7.0
7.0
3.0
1.0
1.0
1.0
1.0
1.0
0.5
0.5


概要
 近年になり完成したシュタイナー家による古の地球帝国メック“バンシー”の派生型は、一年間に及ぶ実戦テストを完了した。実戦テスト計画は、注意深く選出されたライラ共和国のエリート・メックウォリアー達――ロウライン・ホワイト少佐に率いられたグループが担当した。この新メック“バンシーS”は、原型機に大規模な近代化改修が為されたバージョンであり、近接強襲戦闘に於いて可能な限りのパフォーマンスを発揮する事が期待されていた。
 バンシーは今までに戦場に出現したメック群の中でも最も重い部類の1つに入るものであったが、2400年代に生産された時からその貧弱な戦闘能力で悪名が高かった機体である。メックの戦闘力への不満となった原因の焦点は、その武装にあった――不十分な武装から二線級の兵器システムと陰口を叩かれたのである。また、初期のバンシー派生型はメックの打撃力を増大させる事に重きをおきすぎ、結果、しばしば熱負荷によるシャットダウンを起こすといったものになっていた。
 シュタイナー家の派生型バンシーは、問題をよりベーシックなレベルから処理していた。デファイアンス・インダストリーズ社はLCAF軍需部特別委員会の下に、広範な実戦テストを実施する為に一連の“バンシーS”プロトタイプ・シリーズを製作した。そして、この計画はメンバーにダヴィオン家から派遣された数人の科学者達を加え、彼等による指導が行なわれていたのである。また、バンシーSの設計は、惑星“ヘスペラスII”上に存在するデファイアンス・インダストリーのコンビナートより発見されたファイルを基礎としていたのも要因の1つである。
 この改修実施に於いて、バンシーSにライラ共和国で現在も製造が行なわれているコンポーネントの使用が行なわれたという事実は、“ライラ共和国はバンシ−Sの大量生産を考慮している”という噂に油を注ぐといった結果になっている。古の地球帝国の原型プランでは、バンシーSは工場施設群の防衛に寄与する事のみしか考えられてはおらず、その種の生産性の配慮が行なわれていなかったのである。


性能
 シュタイナー家の特別委員会により行われたバンシー再生への最初のステップは、エンジンのサイズ・ダウンであった。こうしてバンシーは、ピットバン285核融合ユニットから動力を供給される事となったのである。この改修は著しい速度の低下を招いた――巡航速度は原型機の43.2kmから、32.3kmに減少したのである。しかし、この事実は最初から然程の問題とはならなかった。バンシーSはシュタイナー家の強襲小隊でのアトラスと戦列を組んでの使用、もしくはアトラスの代替機となる事が期待されていた――現状の速度は、戦場でのアトラスの速度と完全に同一のものであったのである。そして、以前のものよりも小さなエンジンの装備は、武器、その他の装備を追加するのに必要な構造的余裕が確保される事を意味していたのであった。
 この構造的な余裕によりバンシーのオートキャノンは、インペレーターAからインペレーターB・クラス10オートキャノンにアップグレードする事が可能となった。これにより、熱の発生と射程の減少を抑えつつ火力の増強が為されたのである。
 また、最初にバンシーに追加装備された兵器は2つ目となるPPCであった。この第2のPPCはドーネルPPC――ライラ共和国で現在稀少度が高まりつつあるマグナ・ヘルスターPPCよりは供給し易いもの――である。公表された試験映像が示した所では、新たに腕に装備されたこのPPCは“WHM-6R ウォーハンマー”のPPCと同様の形式――腕を砲本体でのみ構成するという構造を採用していた。この腕に装備されたPPCによりバンシーの持つエネルギー兵器戦の打撃力が増加され、メックに柔軟性に富んだ高度な戦術的自由度を与える事が期待されていた。
 更に、バンシーSの右肩にはハープーン6連ミサイルランチャーが追加で装備されていた。このミサイルの弾薬は1tが満載状態で胴部位に搭載されていた――現在NAISで開発中の「弾薬が爆発した時に、その爆発力を外に逃がし抑制する画期的なシステム」を将来バンシーSに据え付ける構想があったのと、バンシーSの装備している堅固な“スターシールド装甲板”によってもたらされる胴部位の重装甲は、弾薬が収納されている箇所を十分に防御できるであろうと期待されたからである。
 そして、元々バンシーSに内蔵されていたレーザー兵器にも増強が為された。まず2門のマグナMk-II中口径レーザーが2連装で前腕部に取り付けられた。この様な配置が為されたのは、メックの戦闘用の拳に細かい作業を行なえる能力を維持させる為であった。他に追加で装備された2門の中口径レーザーはメック胴中央背面部に取り付けられ、これによりメックの背面はカバーされた。これらの武装配置上の特色は、シュータイナー家の多くの将軍達――遅れて重メックによる戦闘の真実を認めた者達――に賞賛された。最期に、マグナMK-I小口径レーザーが近距離戦での火力増大を目的にメックの右胴に搭載された。
 これらの追加された全ての武装は、バンシーの熱負荷を著しく高めた。しかしながら、シュタイナー家の設計では、星間連盟の原設計よりも多い、6基以上もの追加放熱器の組み込みが為されていたのである。これは搭載武装全ての自由な使用を許すものでは無かったが、許容可能な熱レベルでの武装利用選択を可能としたのであった。
 結果、バンシーの攻撃能力は著しく増強され、高い名声を得ていた“スターシールド”装甲板の搭載も維持された事により、悠久からの悪名は払拭されたのであった。実に、近年に為されたDBC社のフロント・ニュースのインタビューにて、バンシーS開発計画に最も声高に反対していたカール・フォン・オーベルマイアー中将をして以下のコメントを言わしめた程である。「我々は新たなウォーハンマーを、ここに手にしたのかもしれない。このバトルメックは全ての作戦に対応できる。そして、シュタイナー家の戦闘機械が持っているべきである巨大さ――それに相応しい巨大さをも保有している」


戦歴
 このシュタイナー家による派生型――“S型”の評価計画実施には、前線部隊への実機配備が必要であった。そして、計画に基づき12機のバンシーSは、近い将来に作戦行動をする予定のLCAF(ライラ共和国軍)部隊に分散して配備された。“S型”を配備された部隊の反応は、最初の内は熱烈なものとは到底言えなかった。だが、テスト実施の為にパイロットとして選抜された著名かつ尊敬されているメック戦士達は、計画に苛立つ多くの指揮官達神経を慰撫する事に成功したのであった。この水際立った策略は、計画主導者の著名なメック戦士ロウライン・ホワイト少佐の手により行われたものである――彼女は直接カトリーナ・シュタイナーに直訴を行い、新たなバンシーの設計に対して人々に偏見を植え付けて計画を遅滞させたり、予期せぬ障害を発生させ得る要因を消滅させたのである。
 首脳の期待を受けて、ロウライン・ホワイト少佐の操縦するバンシーは最初の戦闘に赴いた。3026年初頭の“ニューホープ”への物資強奪作戦に於いて、ホワイト少佐の率いた強襲小隊の突破分断行動により、集結地点にいたレジナルド公爵の擁する軽機中隊の指揮小隊は大混乱に陥った。彼女が搭乗したメックの強化された火力は、マーリックの軍にとっては奇襲的なものであった。彼女は華麗なまでの砲術を見せつけた――マーリック軍が火力戦による損害に堪り兼ねて撤退を強要される前に2機のメックを破壊し、そして敵指揮官機のバトルマスターをも大破させたのである。
 一連の実戦テストに於いて破壊されたバンシーSは、コリーン・スコット少佐搭乗機のみであった。彼女は“ハイランダー”というコードネームで呼ばれている海賊軍鎮圧部隊へ配属されていた。ハイランダー任務部隊は、現時点では継承権戦争の戦闘の奔流の枠の外にある星系群から集められた部隊で編制される予定であった。だが、彼等は集結地点への移動中、“ラ・グレイブ”星系にて待ち伏せ攻撃を受けてしまったのである。スコット少佐と彼女のメックは降下船の破壊から生き残り、惑星を守備していたLCAFの部隊に合流した。この状況下に於いて、先任士官であったスコット少佐は惑星の地上軍の指揮を執り、奇襲攻撃を仕掛けてきたクリタ軍に立ち向った。そして、スコット少佐と彼女のバンシーSは、3027年に裏切り者が行なった暗殺により愛機と共に破壊されるまでの間に傑出した活躍をしたのであった。
 このようなバンシーSが戦場で見せた一連の働きにより、この新デザインにより行なわれるバンシーの再生は完全に満足すべきものであると見なされるようになったのである。


派生型
 “S”計画の初期の段階で見られた派生型の1つには、第2のPPCを第1のPPCの真下に2連装で装備させるというものがあった。メック胴部位の“スターシールド装甲板”により与えられた武器機構への重防御は、2つの巨大なエネルギー兵器を近接させて装備する事からくる深刻な熱不均衡という欠点を相殺して余りある程の利点だと思われたからである。だが、標準以下の性能しか示せなかった排熱機構がもたらしたものは、テストに使用されたプロトタイプ・メックを故障させ、技術者達をメックの機構の修理に習熟させるといった結果であった――これは、最終設計案の構想に役立ったとの事である。
 2つ目の派生型としては、バンシーSと同一のシャシーに指揮/管制能力を付与してバンシーSを補完する機体にするという意図のものも存在していた。このバージョンでは、特殊な通信機器とコンピューターの搭載を重視して武装を犠牲にしていた。この“バンシーSC”として知られる存在は、バンシー原型機の右腕前部に装備された2連中口径レーザーは保持していたが、マグナ・ヘルスターPPCと背面に装備されたレーザーは取り外されていたのである。空いた内部空間には、ナシャン・コンピューター社によって作られた精巧なシステムが据え付けられていた。このシステムの詳細な要目はLCAFの機密で詳しい事は不明であるが、惑星規模での通信能力を持つタクティコンB−2000コンピューターに匹敵するものであると言われている。


著名なメック戦士
ロスケール・ジン大尉
 著名な戦術家かつ技術者であるジン大尉は、以前は謎のメック戦士集団であるチーム・バンザイで働いていた。ジンはその傭兵部隊での地位を辞し、“S”計画に参加する為に現在はダヴィオン家に雇用されている。彼の投入はSC型の設計に於いて助けとなり、計画の実戦テストフェイズでは彼がそのプロトタイプを操縦していた、と伝えられている。このテストが終了した際に、彼はナシャン・ディヴァースフィールド社と個人的に契約した。ナシャン・ディヴァースフィールド社は、彼が操縦するそのメック、“スクリーミング・スカル”を、彼の所有物であると記載している。

ロビン・キング中尉
 キング中尉は、その第12ドネガル防衛軍での軍務中にライラ名誉勲章を2度に渡り授章されている。彼の英雄的な戦歴と彼が示した馴染のないメックを驚くほどの技量で以って操縦する能力は、彼を“S”計画の実戦テストフェイズのパイロットに選出させた。キングのバンシーS、“バンライ”は、リャオ家軍の奇襲攻撃に対する惑星“ニューアース”防衛戦に参加した。この戦闘にて、キングは傑出した勇敢さと戦術面での輝きを示した。彼はその戦闘に於いてメック4機の撃墜を挙げたのである。そして、それらの撃墜したメックの内に55tよりも軽い機体は1機もなかったのであった。

ジェフリー・カスリ中尉
 カスリ中尉は、その卓越した戦歴と疑いの余地のない好戦性によりこの計画に選出された若きメック戦士の1人である。この好戦性は彼のバトルメック、“キャリバン”に、“S”計画中で最も多数修理されたメックという記録を保持させる結果となった。また、カスリの好戦性は、彼がメックに乗っていない時には幾つかの口論をもたらしてもいる。これらの喧嘩は、彼と様々な傭兵メック戦士達との衝突にまで遡れるものである。しかし、彼の熱心さと戦歴は、それらの事件全てに於いて彼への刑事告発を免れさせている。第14ライラ防衛軍は平穏な防衛区域に存在しているが故に、彼の第14ライラ防衛軍の攻撃小隊への配属は懲罰的な懲戒である、と噂されている。




私的解説:

 “バンシーS”は強力な火力と十分な装甲を持ち、3025年代の強襲型メックとしては最高峰と言って良い機体です。正面からの射撃戦では、どのメックにも負ける事はないでしょう(LRM間接射撃を駆使してくるアーチャーやロングボウとかには相性が悪いので要注意ですが)
 ライラ共和国は改修されたこの系列のバンシーを余程気に入ったのか、3050年代にはXLエンジンとガウスライフルを搭載したBNC-5S型、3060年代中期にはライトエンジンを搭載したBNC-7S型を開発し、技術の進歩に応じて着実にアップデートを行っています。
 時を経てライラ共和国を代表するメックとなったバンシーは、“After all, bigger is better.”というライラが愛する哲学を正に体現した存在ですね。

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