リードアウト: ダークエイジ
(ここには、メックウォリアー:ダークエイジのユニットの簡易紹介を置いています)


Mech:

アーバレスト

 このメック――25tの“アーバレスト”の現行の型は、ノバキャット氏族の本星である惑星“イレース”で数年前(3129年前後)から製造されているものである(初期型は“聖戦”の3077年にロールアウト)
 軽量級メックとしては鈍足であり装甲も薄いが、それと引き替えに装備している2門の10連LRMと2門のER中口径レーザーの火力は恐るべきものと言えよう。実際、“アーバレスト”1機のみで敵軍を釘付けにした例も存在しており、本機の有効性は証明されているのである。また、整備性が良好なのも本機の優れた特徴である。

 現在、共和国内でこの機体を最も多く使用している派閥はドラゴンズ・フューリーである。何故ならば、ドラコ連合に居住しているノバキャット氏族から、カタナ・トーマーク個人への贈り物として大量の本機が贈られたからである。
 何故、ノバキャット氏族が彼女に援助をしているのか?――理由は定かでは無い。或いは、彼の氏族の独特の“予知視”に基づくものなのかもしれないが……。




コシ

 “コシ”は、スモークジャガー氏族が開発した強力な25tの軽量級オムニメック“ミスト・リンクス”を基に改良を加えて作られた機体である。
 “ブラックホーク”の成功に気を良くしたダイヤモンドシャーク氏族は、次に“ミスト・リンクス”を非オムニメック化して武装を固定化したバージョンを開発して中心領域に販売する事を決定した。そして、3091年、中心領域への販売促進用に外観が一新されて(原型機の“ミスト・リンクス”からはかなり異なる姿となった)“コシ”と改名されたその機体は登場したのであった。
 当初、完成した“コシ”の販売には難問が立ち塞がった。ダイヤモンドシャーク氏族内には“コシ”の中心領域への販売に反対する勢力があり、彼等は複数の拒絶の神判を挑戦してきたのである。結果、“コシ”が実際に販売に至るまで数年の時を要する事となった。
 一度販売された以降は、“コシ”は中心領域へ順調に普及していき、特にスフィア共和国とカペラ大連邦国で偵察/高速襲撃機として人気のあるメックとなった。




スパイダー

 “スパイダー”は30tの偵察用メックとして開発された機体である。
 その卓越したジャンプ能力・走行能力は他の追随を全く許さない。本機は数多の地上車輌・VTOLを含めても尚、隔絶した存在であった――正に偵察メックとしての最高峰の存在なのである。

 現行の“スパイダー”は、3060年代中盤に行われたプロジェクト・フェニックスに刺激されて原型機をアップグレードし、外観が大きく変化したドラコ連合/自由世界同盟製のSDR-7K型が主流である。開発から80年の時を経ても尚、本機は現役の存在なのであった。




パックハンター

 この30tメックの“パックハンター”は、追放ウルフ氏族(ウルフ・イン・エグザイル)が3059年に中心領域で製造を開始したものである。
 当初、装備している武器はPPCが1門のみであったが、3065年には新開発のマイクロレーザーを搭載した型に改修され、以後のスタンダードとなった。そして、100Kmを越える最高速度、装備されたジャンプジェットにより高い機動力を誇る本機は、連邦=共和国内戦の“ターカッド”侵攻戦、ワード・オブ・ブレイクとの“聖戦”に於ける“アウトリーチ”侵攻作戦にて、その多くが破壊されながらも活躍をしたのである。

 スフィア共和国の成立後、“パックハンター”はスフィア共和国軍に編入され主力の一部となった――そして、現在でも有力な存在であり続けている。




クーガー

 “クーガー”は、3057年の“拒絶戦役”後に、ジェイドファルコン氏族族長マーサ・プライドの指示により開発された35tのオムニメックである。
 本機は、オムニメック・“ピューマ”のシャシーを基礎として用い、エンジンを210XLから175XLに換装してより大きな武装搭載空間を確保する事を意図して開発された。そして、速度は“ピューマ”に比べて若干低下したものの、大幅な火力の増強に成功した中量級の機体として本機は誕生したのである(また、開発上の経緯により、“クーガー”と“ピューマ”はシルエットが酷似しており、戦場でしばしば両機が誤認される原因となった。この事は、戦闘に於けるアドバンテージの1つとなった)
 “コベントリー戦役”、“ブルドッグ作戦”等の戦場で大量に出現した本機は大活躍をし、敵味方を問わずに強い印象を与え、程無く様々な陣営で(戦場で捕獲されるなりして入手されて)使用されるようになっていった。
 そして、3132年のダークエイジに於いても、本機は様々な陣営で用いられ、現役のオムニメックとして存在しているのであった。

 この“クーガー”の中でも注目すべきは、ウルフ竜機兵団がテスト中の新型(クーガーX)であろう。驚くべき事に、テスト機は新型のインプルーブド・ジャンプジェット、強化中枢を採用して、その強力な火力を維持しつつ大幅に機動力と耐久性を向上しているのである。




ファイアスターター

 35tメックである“ファイアスターター”は、今までに作られた中で最も特殊なメックの1つである――このメックは、レーザー、オートキャノン等はあまり搭載せずに、火炎放射器を主武装としているのである。
 直接的な射程・威力は他の武器には劣るものの、搭載された多数の火炎放射器――現行機種では6基に増加している――は、歩兵等の非装甲部隊には恐怖の的であり、自機の過熱を懸念するメック戦士にとっても無視できない武装である。また、防衛戦闘に於いてもこの武装は効果的である事はたびたび証明されている――焦土戦術等で……。
 “聖戦”に於いては、“チコノフ”のアースワークス社の工場を狙って来襲したワード・オブ・ブレイクの狂信者達を相手に“ファイアスターター”は都市の一部に火を放ち、火炎の嵐で以って撃退に成功をしたという事例も存在している。

 何にしろ、32世紀の時代にもこのメックが用いられている事は、その価値を証明するに足る事実と言えよう。




パンサー

 主にドラコ連合内で大量に使用されている“パンサー”は、2739年に開発された古い設計の35tメックである。しかし、技術の発展に従って適宜改修が施された本機は、その信頼性と相まって軍にとっては未だに“ワークホース”と言える存在なのであった。
 高出力のER-PPC、2門の4連SRMを装備した現行のパンサーが開発されたのは、“聖戦”の最中である。そして、この古兵は“聖戦”の終結後もゴーストベアー氏族との紛争、辺境から飛来するトルトゥーガの海賊達との戦闘、スノーレイヴン氏族との戦闘等で自身の価値を証明し続けている。




ハチェットマン

 ライラ共和国=恒星連邦が3023年に開発した白兵戦用メック――“ハチェットマン”は、正にエポックメイキングな機体であった。
開けた戦場では些か脆弱であるが、操縦者の生存性を第一に考えた設計、白兵戦に特化した設計は、都市等を舞台にした近接戦闘では極めて有効な存在だったのである。特に、その格闘戦能力は対戦相手のドラコ連合には高く評価され、本機のコピー機が作られた程である(後には、強力な重格闘メック“ノダチ”の開発の参考にもされた)
 また、本機の有する高度な格闘能力は、“氏族”が侵攻してきた3050年には極めて効果的な働きをした。“氏族”は射撃戦闘では無類の強さを発揮し、装備した武器の優秀さと相まって手のつけられない存在であったが、格闘戦闘は苦手としていたのである。
 結果、“ハチェットマン”は数少ない中心領域側の“氏族”との戦闘に於けるアドバンテージとなったのであった。故に、後継機として“アックスマン”、“ナイトスカイ”といったより強力な機体が開発されても、本機の生産と改良は継続して行われたのである。
(ソラリスVIIのメック闘技場でも“ハチェットマン”は愛された――3027年度のグランドチャンピオンとなったジャスティン・シャン・アラードや、その息子のカイ・アラード=リャオの搭乗機だった事も理由の1つなのかもしれないが)

 3133年の時でも、“ハチェットマン”は現役のメックである。装備は若干改修され、ウルトラAC/10、ER中口径レーザーを中心とした武装に変化している。
 このメックを愛するメック戦士は多い。メック戦士達は、装備された“劣化ウランで作られたハチェット”の切れ味――ホット・ナイフでバターを切るが如くメックを切り裂く――に魅せられているのである。




センチュリオン

 “センチュリオン”は、列強の軍に於いて(特にダヴィオン家で)標準的な中量級の50tバトルメックである。
 中程度の機動力、中程度の火力、中程度の装甲……通常型“センチュリオン”の性能面に突出した部分はないが、逆にこの事が機体の安定性・信頼性を高めている。戦場で汎用性に富んだ“センチュリオン”が無用になる事は一度としてなく、全ての指揮官にとって安心して使える戦力だったのである。

 また、“プロジェクト・フェニックス”等で一新された“センチュリオン”の有する機体構造は後の発展した技術を取り入れるのにもある程度適しており、様々な派生型が生まれる要因ともなっている――本機には、実に数十種類もの改修・新設計機が存在しているのである。




リージョネア

 “リージョネア”は、アーケルナル・バトルメックス社(現在――3132年――では、有力なインダストリアルメック・メーカーの1つ)が恒星連邦領内に在った時にコリアン・エンタープライゼス社によって開発され、アーケルナル・バトルメックス社によりライセンス生産された最後の新設計メックの1つである。
 50tのシャシーに350XLエンジンを搭載した本設計機は、現存する中量級メックの中でも最速の存在であり、恐るべき発射速度を誇るRAC/5を基本武装に据えた事と相まって、戦場では非常に厄介なものとなっている。しかし、武装がRAC/5の1門のみであるというのは、設計上の欠陥と言えるであろう。
 しかし、“リージョネア”は有力な存在である事を数多の戦いで証明しており、上記の欠陥は些細な事と見なされている。その中でも特に、“第3次ニューアヴァロン戦”での活躍は最も高名なものであろう。――本機は惑星“ニューアヴァロン”に侵攻してきたワード・オブ・ブレイクの軍勢にその有する快速を生かした側面からの一撃離脱攻撃を実施し、3074年、ワード・オブ・ブレイクの第44シャドウ師団を最終的に惑星外へ退却させる原動力となったのである。




ブラックホーク

 “ブラックホーク”は、ヘルズホース氏族が開発した古い設計の50tの中量級オムニメック“ノヴァ”を基に改良を加えて作られた機体である。
 “聖戦”が終結して間もない3080年代中期、ダイヤモンドシャーク氏族はヘルズホース氏族からオムニメック“ノヴァ”を非オムニメック化した機体(“聖戦”中にヘルズホース氏族が開発した武装固定型バージョン)の全ての権利を買い取り、それを製造して中心領域に大量販売する事を目論んだ。そして、中心領域への販売促進用に“ブラックホーク”と改名されたその機体の最初の生産分は3090年が始まる前には完成し、スフィア共和国に納入された。
 しかし、ここでトラブルが発生した――“ブラックホーク”の最初の生産分の発注をしたスフィア共和国は、それを不注意な誤解によりオムニメック版であると思い込んでいたのである。事態が明らかになった時は手遅れであり、スフィア共和国は多少の失望と共に“ブラックホーク”を訓練任務や防衛任務といった二線級任務に割り当てた。だが、“ブラックホーク”はそれらの二線級任務をよく果たし、特性が理解されるにつれて注文は増えてゆき、最終的には中心領域、更には氏族にさえも広まっていった。
 今日、“ブラックホーク”は中心領域の全勢力にて使用されており、氏族技術兵器をオムニメックよりも比較的安価に導入/維持できる事から特に小規模傭兵部隊や企業警備部隊での人気が高い。また、派生型の“ブラックホーク2”はオリエント保護国に於いて特に多数が存在するものである。




マッドキャットIII

 “マッドキャットIII”は、ダイヤモンド・シャーク氏族(現在はシーフォックス氏族に改名)によって作られた中心領域への輸出用メックである。
 成功した“マッドキャットMk.II”(マッドキャットの重量増加型発展機)のコンセプトを踏襲しつつ55tの中量級メックとして作られた本機は、速度・火力・装甲が適度に纏められた傑作と言える存在である。
 故に、本機のセールスは良好なものとなり、スフィア共和国も多数を購入して軍の主力としたのであった。

 “マッドキャットIII”の改良は以後も続けられており、現在、軍や各派閥ではその最新型が使われているのを見る事が可能である。




カタパルト

 “カタパルト”――この26世紀後半に生産された65tメックは、些か不幸な歴史を持つ機体かもしれない。
 本機自体は有力な存在であったのだが、種々の出来事により最初の数年以降は常に大量生産ができず、少数の生産に留まったのである。しかし、かような事実があったとしても、長距離支援メックとしての本機は(接近さえされなければ)戦場に於いては効果的で頼りになる存在であった。
 そして、技術復興後も新規生産はそれ程されなかったが、時代の変化に合わせて本機には改修が施され、様々な派生型が生まれたのである――アローIVミサイルを搭載した型、PPCを搭載した型、MRMを搭載した型等々……。

 3133年の“カタパルト”には、LRM15を2門、LB-2Xオートキャノンを2門搭載した型が登場している。この型は近距離戦闘には適していないが、遠距離戦闘では強力な存在であると言えよう。




リョウケンII

 “リョウケンII”は、ダイヤモンドシャーク氏族(現在はシーフォックス氏族に改名)が製作した“マッドキャットMk.II”の設計とセールスの成功から生まれた機体である。
 ゴーストベアー氏族は“マッドキャットMk.II”の成功を見て、そのコンセプトを踏襲して中量級メック“リョウケン”を再設計した。こうして、“リョウケン”はより重く、力強い存在――75tメックの“リョウケンII”として生まれ変わったのである(“リョウケンII”と言う名称は、ゴーストベアー・ドミニオン内に居住する中心領域人に対する宥和政策の一環として名付けられたものである)
 本機が工場の生産ラインからロールアウトしたのは3075年――“聖戦”の真っ最中の時であった。そして、本機はドラコ連合とゴーストベアー氏族によって編制された連合軍によるワード・オブ・ブレイク教団への反撃の原動力の1つとなったのである。
 また、3077年の“ディーロン”星系奪還戦の時には本機のデザインが持つ意外な利点が功を奏した。“リョウケンII”のシルエットは“リョウケン”と酷似しており、初めて“リョウケンII”を戦場で目撃したワード・オブ・ブレイクの軍勢は本機を普通の“リョウケン”と誤認してしまったのである。
 更に、本機は“所有の神判”を経ずにゴーストベアー氏族からスフィア共和国へ直接売却された最初のメックである。この事実は氏族の伝統を重視するジェイドファルコン氏族、ヘルズ・ホース氏族、ウルフ氏族に不満を抱かせた。特にヘルズ・ホース氏族は数回に渡って実際に“不服の神判”をゴーストベアー氏族に対して発動し、争った程である。

 現行のリョウケンIIは、“聖戦”時に登場し、たLB-2Xオートキャノンを4門とLRM15を2門搭載した型が主流である。長距離射撃戦闘に於いては、本機は極めて有力な存在である。
 また、ウルフ氏族には、LRMをSRMに、LB-XオートキャノンをER-PPCに換装した“リョウケンII”が存在している。この型は地獄の炎の如き熱を射撃の際に発生させるが打撃力は極めて優れている――真に、あのケレンスキーの末裔に相応しい機体と言えよう。




ツンドラウルフ

 “ツンドラウルフ”は、ウルフ氏族が初めて完全に中心領域で設計・生産した75tの重メックである。
 300XLとMASCシステムを採用して高機動能力を確保しつつ、ATM9を1門、ER中口径レーザーを4門、LRM20・ER大口径レーザー・SRM4を1門ずつ搭載した本機は、正に破滅的な存在と言えよう。
 しかしながら、本機は“聖戦”で活躍するには生産速度が遅すぎた――本機が戦場に送られる頃には、“聖戦”はほぼ決着がついていたのである。結果、本機の活躍の場はその後の他氏族との神判での戦闘に移される事となり、そして、そこにて自身の価値を証明したのであった。
 また、本機には幾つかの派生型も存在している。その中でも有名なのは、両腕にER-PPCを搭載し、ATM9を増設した型である。
(これを、“あの”ケレンスキーの名を継ぐ戦士が乗機として用いているとの話もある……本機は、新時代のウォーハンマーと言えるものなのかもしれない)




ゼウス

 “ゼウス”――この80tの強襲型メックは、ライラ共和国を支配するシュタイナー家の軍にとって長年主力であり、愛された存在である。故に、時代が進み技術の革新が行われ、ゼウスを凌駕する性能のメックが出現しても、常にライラ共和国軍の中には本機の姿があったのである。
 そして、現在(3132年)でも、これは変化してはいない――シュタイナー家は本機の改良を継続しており、依然として軍の主力として保持しているのである。
(現在使用されている型は、ライトエンジンを採用したZEU-9Tの改修型が多い)

 近年、ライラ共和国の軍需局はゼウスを新兵器のプロトタイプのテストをする為のプラットフォームに選出し、実戦テストを実施している。このテスト機――“ゼウス−X”は、400XXL、リアクティヴ・アーマー、MRM、中口径X-パルスレーザーを搭載した、正に意欲作と言えよう。
 ゼウスの試作機の幾つかは、長年ライラ共和国に仕えている高名な傭兵部隊“ケル・ハウンド”に実戦データを収集する為に与えられている。収集された実戦データの評価が終了した暁には、ライラ共和国は新たな恐るべきメックを手にする事になるであろう。




マッドキャットII

 “マッドキャットII”は、ダイヤモンド・シャーク氏族(現在はシーフォックス氏族に改名)によって中心領域への輸出用に大量生産された90tの強襲メック“マッドキャットMk.II”の発展改良型である。
 本機が工場の生産ラインから出たのは“氏族戦争”終結後の事である。しかし、程無くワード・オブ・ブレイク教団による“聖戦”が勃発して本機の需要は大いに増し、ワード・オブ・ブレイクの軍勢に立ち向う同盟軍の主力として中心領域全土に拡がっていったのであった。
(ウルフ氏族やジェイドファルコン氏族は、(心理的要因から)本機の採用を当初は全く考えていなかったが、“聖戦”の苛烈な現実を前に採用を行ったのであった)

 今日でも“マッドキャットII”は強力な存在であり、改修を受けつつ第一線に留まっている。その中でも、スチール・ウルブスの指導者であるカル・ラディックが搭乗した機体は恐るべきものである――彼の機体は2基のLRM15と大口径ヘビーレーザーを4門も搭載しているのである。カル・ラディックは、この機体により自身が“聖戦”で活躍したウルフ氏族デルタ・ギャラクシーの栄光を受け継ぐ存在である事を周囲に示しているのかもしれない。




アトラス

 星間連盟最後の摂政でもあるケレンスキー将軍の直接指示により28世紀中盤に開発された100tメック・“アトラス”は、今までに製造されたメックの中で最も有名な機種である。
 アトラスに能力的に匹敵・凌駕する機種は多数存在している(28世紀以後に作られた100tメックだけでも数十機種が存在している) しかしながら、どの機種もアトラスが有している程の外見的威圧感と伝説的な戦歴を持ってはいない。数多の高名なメック戦士――モーガン・ハセク=ダヴィオン、ニコラス・ケレンスキー、アナスタシアス・フォフト等――が、この機体を乗機に選び伝説を生み出し、そして歴史上の重要な戦いには必ず本機の姿があったのである。
 アトラスと戦場で対面する事になったメック戦士は、多数の攻撃が命中しても倒れずに圧倒的な火力で反撃してくる様子を見て例外なく恐怖する。髑髏を想起させるデザインの頭部を持った本機は正に戦場の死神と言える存在であった。

 故に、今日でもアトラスの製造と改修は続けられており、変わらず戦場に健在である。現行のアトラスは、ER大口径レーザー2門、ガウスライフル1門、ストリークSRM6を2門搭載しつつエンジンを400XLにアップグレードし、戦場での機動性を高めた型が主流である。
 スフィア共和国の聖騎士も数人がアトラスを乗機にしており、本機の伝説はこれからも書き綴られていくのであろう。




ジュピター

 “ジュピター”はジェイドファルコン氏族の二線級部隊用に製作され、3067年にその姿を現した100tの強襲型メックである。
 このメックは、ジェイドファルコン氏族の最強オムニメックである“ターキナ”程は戦場に於ける柔軟性を有してはいない。しかし、ジェイドファルコンの科学者階級により、既存の部品を多く用いて堅実に設計された本機は修理・整備が容易であり、戦場に於ける稼働率は他の大部分の機体よりも優れているのである。
 この特性は戦場に於いて存分に発揮され、“ジュピター”は二線級メックの主要な素早く地位を占めるに到った。そして、“聖戦”でのアイスヘリオン氏族の攻撃に対する防衛戦等で大活躍をした本機は、今尚、恐れられている存在なのである。

 標準的なジュピターは、ER−PPCを2門、LRM15を2門、ウルトラAC/5を4門搭載している。本機は、長距離射撃戦では恐るべき存在と言えよう。






IndustrialMech:

フォレストリィ・メック

 “フォレストリィ・メック”(伐採メック、或いは林業メック)は、700年以上の歴史を誇るワークホースである。
 林業メック達は、惑星上に存在した木々類を次々と伐採し、根こそぎにして資源とし、同時に平地を拡大していった――正に、“エクソダス”の時代の功労者の1人なのである。また、これらのメック達は、史上最も恐るべき兵器である“バトルメック”の原型ともなったのであった。
 現在(3132年)、この種別のメックで最新鋭のものは、アースワークス・リミテッド製のものである。25tのシャシーに、特製のチェーンソー、重作業用のクローを搭載したアースワークス社の製品は、伐採作業に於ける究極の存在と言えよう――そのチェーンソーは既知の物質の大半を容易に切断でき、クローは巨木をも引き抜けるのである。
 本機は最高時速80Kmにも達する軽快な機動力を有しており、戦闘の際には素早く敵に接近して襲う事が可能である。無改造でも本機は戦闘に(それなりに)適していると言えよう。




フォレストリィ・メックMod

 “フォレストリィ・メックMod”は、アースワークス・リミテッド社の通常の“フォレストリィ・メック”を戦闘用に改造したものである。
 “フォレストリィ・メックMod”は中枢に強化が施された結果、全体的な耐久力/重量の増加に成功し35t級の機体となっている。装甲も原型機の2倍に増強され防御力も強化されている(速度性能の大幅な低下と引き換えにであるが)
 また、武装は、(メックの装甲をも切り裂ける)チェーンソーを残し、クローをLB-5Xオートキャノンやクラス2・オートキャノンに換装している。本機は、接近戦では侮れない存在と言えよう。




コンストラクション・メック

 “コンストラクション・メック”は、2691年に“地球”で作られた建設用のメックである。このメックは時代と共に徐々に改良が加えられてゆき、様々な派生型が存在してい。
 その右腕に装備されたバックホーは通常の建設重機よりも長く、広い範囲と深さをカバーする事が可能である。また、その左腕のリフトホイストはフェロクリートを容易く砕くけるだけのパワーを有し、それでいながら光ファイバーのケーブルを設置できる程の器用さも持っている。
 “コンストラクション・メック”は、戦闘に使用するには装甲が脆弱であり過ぎるが、そのバックホーを駆使しての接近戦での戦闘力はそれなりのものがある。“コンストラクション・メック”の中にはインダストリアルTSMを装備している型もあり、それらの型と戦闘をする時は特に要注意である。



コンストラクション・メックMod

 “コンストラクション・メック”を戦闘用に改造したのが、この“コンストラクション・メックMod”である。
 腕にあったバックホーは、大抵の場合はマシンガンか火炎放射器へと置き換えられている。そして、胴中央には短距離ミサイルか長距離ミサイルが搭載されるのが常である。リフト・ホイストは陣地構築や鹵獲品の回収に威力を発揮する為に残されている事が多い。
 “コンストラクション・メックMod”は鈍重かつ装甲が脆弱である故に戦闘の主力にするには心細いが、支援用にはそれなりに役立つものである。




アグロ・メック

 “アグロ・メック”(農耕用メック)もまた、700年以上の歴史を持つワークホースである。
 既存の車輌と比較して農作業に於ける柔軟性の高い“アグロ・メック”は、“エクソダス”期に爆発した人類の人口増加にも耐えられる程の量の食料増産に貢献した、正に人類の救世主とも言って良い存在なのである。
 現在(3132年)、この種別のメックで最新鋭のものはアーケルナル社製のものである。元は有数のバトルメック製造メーカー(エンフォーサー、オシリス、アーガス等の生産で有名)であったこの企業は、スフィア共和国の成立を知ると素早くバトルメックの生産ラインをインダストリアル・メック生産用に再編し、インダストリアル・メックのメーカーとして再出発したのである。
 35tのシャシーに巨大なロータリーソー(回転鋸)を搭載し、オプション装備として2基のコンバインとリフト・ホイストを持つこの機体は、頑丈な装甲を搭載している事と相まって過酷な環境の作業にも十分に使える存在である。故に、このメックは現在の中心領域でベストセラーとなっているのであった。
 この機体は元々、並外れて頑丈に作られており、その装甲は中量級メックの搭載しているものに匹敵する程である。本機は、無改造でも軍事に(それなりに)転用できる機体なのである。




アグロ・メックMod

 “アグロ・メックMod”は、通常の“アグロ・メック”を戦闘用に改造したものである。
 汎用性を高めるべく、装甲と機動力の低下と引き換えに、“アグロ・メックMod”には射撃兵器が搭載されている。本機の武装は左腕のロータリーソーを残しつつも、右腕のクローは取り外されてクラス5・オートキャノンとなっているのである。




マイニング・メック

 “マイニング・メック”も、700年以上の歴史を持つワークホースである。
 この鉱業用のメック達は、“エクソダス”時代の人類の工業的発展を支えるべく、驚異的な速度で採掘を行ない資源を供給し続けた正に功労者なのである。
 現在、この種別のメックで一般的な存在となっているのは、ド・ヴァルト・インダストリー社製の機体である。本機の持つ硬い岩盤を一気に切り裂く割岩機と掘削ドリルは極めて効率の良い作業を可能としており、中心領域でベストセラーとなっているのである。




マイニング・メックMod

 “マイニング・メックMod”は、通常の“マイニング・メック”を戦闘用に改造したものである。
 元々、苛酷な環境下での使用を前提としていた“マイニング・メック”の装甲は、軍規格のものと比べても遜色の無いものであった。本機の装甲はそれを0.5t増強し、更に、マシンガン2門とSRM4を2基搭載している。また、掘削ドリルは取り外されたが恐るべき割岩機は残されており、本機を接近戦で危険な存在に留めている。






Vehicle:

フォックス装甲車輌

 この“フォックス装甲車輌”は、前線での観測/偵察任務用に製作された20tの小型車輌である。
 この車輌の武装・装甲は貧弱極まりなく必要最小限しか搭載されていないが、余り問題視されてはいない。何故ならば、危険な状況下でも、この車輌の持つ卓越した機動力は戦術的な後退を素早く実施できるからである。この車輌はニッサンの195XLを搭載しており、発揮可能な最高速度は実に時速230kmに達するのであった。
 しかし、XLエンジンの搭載により製作コストが高額なものとなっているのは、些か問題と言えるかもしれない。



シャンドラー前進偵察車輌

 25tの“シャンドラー前進偵察車輌”は、“聖戦”の直前に出現した装輪の軽偵察車輌である(この車輌は、“サカデ”との愛称で呼ばれる事もある)
 レーダーの反射を最小限に抑える為に電波吸収素材を使用して製作され、ガーディアンECMを搭載した本車は、使い勝手のいい偵察機材である。また、ER小口径レーザー1門、SRM-4発射筒1基、マシンガン2門と自衛に十分な武装も搭載している。
 平和な時代であっても信頼できない隣人の動向を見張る必要がある事から、本車は3130年でも生産が続けられ、未だに現役である。




移動司令部

 軍部隊の指揮の中核となるのが、この“移動司令部”である。
 強力な通信機器、各種の電子装置、立体映像技術が駆使された精密な戦況表示システムを搭載したこの車輌は正に動く司令部と言える。
 32世紀の“移動司令部”は、車体を30tのものに拡大し各種機器を更に先進的なものに換装した型が主流になりつつある。




MIT23 M.A.S.H.軍用車

 35tの軍用車輌である“MIT23 M.A.S.H.”は、今日の中心領域に於ける標準的なM.A.S.H.(Mobile Army Surgical Hospitals=機動軍野戦病院車)である。
 旧来の星間連盟軍のM.A.S.H.(20t)を更新する目的で開発された“MIT23 M.A.S.H.”がコムスターの生産ラインより出たのは、“聖戦”の勃発する前の事であった。危険な前線まで出向ける機動力を有し、特別なジャイロスタビライザー搭載により険しい地形の移動中でも手術をする事が可能であり、1個歩兵分隊を一度に治療できる本車は、過酷な戦場で倒れるPBI……“哀れな血塗れの歩兵”達にとっての救世主であったと言えよう。
 今日の“MIT23 M.A.S.H.”の多くは、その能力が氏族の医療技術により増強されており、負傷した兵士を再び戦場へ戻す速度は更に向上している。本車は、戦力を維持したい軍隊には欠かせない存在なのである。




シミターMK.IIホバー戦闘車

 “シミターMK.IIホバー戦闘車”は、100年以上も継承武王達の間で使われてきたあの35tの“シミター・ホバー中戦車”の性能向上型である。
 原型車とは違い核融合エンジンを搭載し、オートキャノンを取り外した事により、本車の最高速度は劇的に向上(時速162Km)している。しかも、新たに増設された5基もの小口径レーザー、2基のマシンガンにより近接火力も大幅に増強されている。――戦場で軽快に動き回り捕捉し難い本車は、些か厄介な存在かもしれない。




BE701ジョースト中戦車

 “SM1対戦車車輌”の実戦での良好な使用実績を受けて、ノバキャット氏族が続いて開発をした中戦車――それが、この“BE701ジョースト中戦車”である。
 この戦車の重量は40tで、戦闘部隊に戦場での直接支援火力を付与する事を目的としている。そして、その役割を果す為に本車にはLRM10とER大口径レーザーを1門ずつ、対歩兵用の近接防御火器としてはマシンガンが8門も取り付けられているのである。
 しかしながら、この戦車には欠点があった――火器管制装置の欠陥から、不意にER大口径レーザーの励起が不可能になる事があったのである。
 現行の機種ではこの欠陥は改修されており、スフィア共和国内でも各派閥で使われているのが見られる。
 戦場で長距離から無視出来ない打撃をもたらしてくる本車は侮れない存在であろう。




VV1レンジャー歩兵戦闘車

 “VV1レンジャー歩兵戦闘車”は、“ストライカー軽戦車”の相方としてヴァリアント・ヴィークル社が開発した45tの戦闘車である――“ストライカー軽戦車”はLRMと対車輌用の兵器を搭載して対戦車支援に、“VV1レンジャー歩兵戦闘車”は対歩兵用の兵器を搭載して対歩兵戦闘に……という構想に基づいての事であった。
 故に、“VV1レンジャー歩兵戦闘車”は、“ストライカー軽戦車”よりも高速で、8門のマシンガンと4門の小口径レーザーを搭載した車輌となって誕生したのである。
 歩兵直協用としての本車は、極めて有効な存在であると言えよう。




デーモン中戦車

 “デーモン中戦車”は、原設計を2716年(星間連盟)にまで遡る事ができる古い歴史を持つ戦車である。そして、現行の設計はスフィア共和国の手によるものである。
 現行の“デーモン中戦車”はオリジナルから比べて15t程も軽くなっており、オリジナルの象徴であった強力なガウスライフルも取り外されている。
 だが、その代わりとして最高速度はオリジナルの2倍にまで向上しており、4門のマシンガンと2門の中口径レーザーが取り付けられている――本車は、歩兵・バトルアーマーから都市を防衛する為に生まれ変わった存在なのである。




コンドル戦車

 “コンドル多目的戦車”――この50tのホバー戦車は、元の設計を改修しつつ現在でも使用され続けている。
 クイックセル社によって開発された現行の型ではXLエンジンが採用され、LB-10XオートキャノンとLRM15が搭載されて遠距離火力は大幅に向上している。また、連邦=共和国内戦の戦訓から対歩兵火器も増強されている。これらの徹底的な改設計により、現行の型は旧来のコンドル戦車とは似ても似つかぬものへとなっている。
 この型が最初に戦場に現れたのは、ワード・オブ・ブレイクとの“聖戦”の直前である。“聖戦”で各国の軍が受けた甚大な損害と本車が各所で見せた活躍により、本車の需要は爆発的に高まり、クイックセル社は嬉しい悲鳴をあげる事となった。その中でも、3073年の惑星“スカイア”の防衛戦の際にコンドル戦車が見せた活躍は、特に著名なものである。




JESミサイル・キャリアー

 “JESミサイル・キャリアー”は、かつてジョイント・エクイップメント・システム社(JES)のSRM/LRMキャリアーが一角を占有していた市場――3050年代に他社のアップグレード版にその市場は奪われていた――を取り戻す為に同社の手によって開発された50tの車輌である。
 しかしながら、本車の軽装甲とホバー車輌らしくない低速は主要国の軍には疑問視され、多くの注文は受けられなかったのである。ただ、辺境の国家――タウラス連合国、カノープス統一政体、マリアン・ヘゲモニー――のみが本車をそれなりの数で購入したのであった。
 現在は、“JESミサイル・キャリアー”はそれなりの評価を得ている。3基のSRM6発射筒、4基のSRM4発射筒を持つ本車は、戦場では油断のならない存在であると言えよう。




SM1対戦車車輌

 数世紀もの間、“氏族”は歴史・文化的要因からバトルメックこそが戦士に相応しい武具だと見なし、戦闘車輌全般に対して軽侮の念を抱いていた。
 しかし、3050年に中心領域に侵攻した“氏族”の軍勢は、その認識を改めざるを得なかった。中心領域の軍勢が使ったコンバインド・アームズ戦術(諸兵科連合戦術)は非常に効果的であり、彼等が通常に用いる戦術よりも優れた部分があったのである。結果、“侵攻氏族”は戦闘車輌の有用性を再評価するに到り、新たな戦闘車輌の開発を実施したのであった。
 特に、この流れに熱意を持って取組んだのはノバキャット氏族である。3062〜3063年のゴーストベアーとの戦争をドラコ連合と共に戦ったノバキャット氏族と、その族長のサンティン・ウェストは、ノバキャット氏族が将来に於いても生存を続けるには、中心領域の戦術により適応しなければならないと認識していたのである(それに、ドラコ連合のエリート部隊である第2リュウケン連隊との演習を行った際に、諸兵科連合戦術の有効さを思い知らされたのも大きかった)
 この“SM1対戦車車輌”は、ノバキャット氏族が“ショーデン強襲車輌”の成功を受けて次に開発した50tの戦闘車輌である。

 名称通り、この車輌の目的は“戦車殺し”であり、それを実現する為に武装にウルトラAC/20を1門搭載し、軽快な機動力も付与されている(最高速度は時速130Km) また、射出型のデュアル・バブル・コクピットや組立ての容易な構造の採用により、乗員の生存性と生産効率は上昇し、3068年のその出現以来、“聖戦”を戦うノヴァキャット氏族とドラコ連合の戦力増強に大いに寄与した。
 本車は現在でも多くの陣営で使われおり、それこそが本車の有効性を証明していると言えよう。




JI100機動野戦修理車輌

 メック修理/回収を主目的として設計されたのが、この“JI100機動野戦修理車輌”である。
 本車は、70tの車体に3基の機械式のアームと最小限の武装(マシンガン2門)、装甲を搭載している。3基のアームには、それぞれ各種の切断・溶接機器が搭載されており、戦場での素早い修理の実行を可能としている。また、最大で100t以上もの重量の牽引も可能であり、正に戦場の主力回収車とも言える存在なのである。
 中心領域のあらゆる陣営で使われている本車は、戦場に於いて最も価値のある車輌の1つであろう。




DIシュミット戦車

 高名な兵器メーカーであるデファイアンス・インダストリー社(DI)が、“ロンメル戦車”・“パットン戦車”・“デモリッシャーII戦車”に続く新型の80tの装輪強襲戦車として開発をしたのが、この“DIシュミット戦車”である。なお、本車の“シュミット”の名は、星間連盟首長の親衛隊的存在であった“ロイヤル・ブラックウォッチ連隊”の最後の指揮官であった偉大な“ハンニ・シュミット大佐”から採られたものである。
 本車は移動速度は低いが、搭載している武装は、RAC/5が2門、LRM15が1門、中口径レーザーが4門、火炎放射器・マシンガンが2門ずつと非常に充実している。この様な強武装が実現したのは、本車が220XLエンジンの採用・搭載に成功した為であろう。




JESII ミサイル・キャリアー

 この“JESIIミサイル・キャリアー”も、ジョイント・エクイップメント・システム社(JES)の手により市場で勝利を収めるべく開発されたものである。
 幸運な事に、“JESIIミサイル・キャリアー”は“JESミサイル・キャリアー”とは違い、市場での反応は当初からそれなりに良好であった。95tの巨大な車体に4基のLRM20発射筒と2基のLRM10発射筒を備えた本車は極めて鈍重な存在ではあるが、防衛戦闘には非常に有効であると見なされたのである。
 結果、中心領域の主要国はおろか、辺境、氏族にまでも“JESIIミサイル・キャリアー”は受け入れられた。
 3132年でも本車は各所の戦場で使用されており、普通に見る事が可能である。




M1マークスマン戦車

 “M1マークスマン戦車”は、“デーモン戦車”と同様に、その起源を星間連盟時代まで遡る事が可能である。
 2702年に製作された星間連盟期の型の“マークスマン”は、スナイパー間接砲を搭載した65tの自走砲であったが、初期出荷車輌に存在したキャタピラ機構の欠陥から現場の兵士には非常に嫌われる存在であった。(このキャタピラ機構の欠陥は後に是正されたが、全ての車輌に改修が施された訳ではなく、悪評を払拭するには至らなかった)
 現行の“M1マークスマン戦車”は、スフィア共和国が高い優先順位を与えて原型車を基に新たに開発した車輌である。
 スナイパー間接砲の代わりに多数の武装――ガウスライフル×1、ストリークSRM4×2、SRM6×2、LRM10×2、マシンガン×4――が搭載された本車の重量は95tに達し、戦車として究極の進化に達した存在と言えよう。それ故に、当初は存在していた“マークスマン”の名を継承した事からくる本車への疑念は、それ程の間を置くことなく消え去っていったのである。
 本車が戦場に現れたのは、3083年のカペラ大連邦国との紛争時であった――スフィア共和国が建国されてから僅かに2年の時である。これは、スフィア共和国が本車の開発を如何に重要視したかの証左となるものであろう。




ベヒーモスII戦車

 “ベヒーモスII戦車”は、“ベヒーモス重戦車”のアップグレード・バージョンである。
 既存の車輌の中では最大の100tの車体と、それに搭載された多数の武装――ER大口径レーザーとガウスライフルが各1門、2基のLRM20発射筒、2基のSRM4発射筒――は、正に陸を走る鉄の城と言った趣である。
 しかしながら、“ベヒーモスII戦車”が世に出たのは32世紀――平和な世の時であった。故に、“ベヒーモス重戦車”の名声を受け継ぐ戦車とは言えども、購入をする者は、当初は全く存在しなかったのであった。今までの顧客達に無償で“ベヒーモスII戦車”を供与して、戦場で使用させて威力を認識させるという販売戦略が当たらなければ、本車の存在は歴史から消えていたかもしれない。
 現在、戦場で存在の有効性を示した“ベヒーモスII戦車”は、どの陣営でもその姿が見られる。例え戦場の王者であるメックと言えども、この戦車を撃破する事は容易ではないであろう。






Infantry:

クラン・バトルアーマー

 3050年、中心領域はクラン(氏族)の侵攻を受けた。彼等と最初に砲火を交える事となった中心領域の軍勢は、氏族が用いた圧倒的な性能の兵器群――“オムニメック”、“オムニ戦闘機”、“戦艦”、“バトルアーマー”に驚愕し、恐怖した。
 その中でも、特にメック戦士達を戸惑わせたのは、バトルアーマーを着た歩兵で編制された氏族の“エレメンタル部隊”であった。バトルメックの強力な武装の一撃に耐え、戦場を縦横無尽に舞いつつメックに群がり攻撃し、SRMとレーザーを放ってくる存在は、メック戦士にとっても悪夢が具現化したとしか思えないものだったのである(この最初のバトルアーマーには“トード”(ヒキガエル)とのコードネームが付けられ、忌み嫌われた)
 中心領域にはバトルアーマーに似た兵器で武装された歩兵部隊は過去に存在した事は無かった。真に、氏族のバトルアーマーは中心領域の軍事的常識を遥かに超越していたのである(中心領域のメック戦士達が当初、氏族のバトルアーマー=エレメンタルの事を、エイリアンの一種であると考えていたとしても、特に驚くべき事ではない)

 この“トード”=“エレメンタル・バトルアーマー”は、コンパクトなパワーパックと強化人工筋肉を動力としている。また、完全な気密性が保たれており、着用者に真空/水中での作戦を可能とさせる。そして、“エレメンタル・バトルアーマー”には各種のセンサーが取り付けられており、戦術通信網、武装状況を表示するヘッドアップ・ディスプレイ、パイロットのコンディション監視機器とリンクしていて、不測の事態に対処が可能となっている(パイロットが危機的状態に陥った時は、自動的に医療システムが起動するようになっている)付け加えて、“エレメンタル・バトルアーマー”には完全なジャンプジェットが装備されており、着用者に空中機動能力の付与を保証しているのである。

 “エレメンタル・バトルアーマー”は、現在(3132年)でも他を圧する存在である。そして、ドラコ連合とノバキャットが共同開発をした、それの改良型が、“クラン・バトルアーマー”である(ロールアウトは3067年) この型の外観が“エレメンタル・バトルアーマー”のものと大きく異なっているのは、共同開発の過程で、デザインに「サムライのアイデンティティ」を表すものが採り入れられたからである――戦国時代の武士の兜の如き頭部は、こうして誕生したのであった。また、このバトルアーマーに備わっている特性の1つ――ハージェル(HarJel)として知られているジェリー状の物資を利用した自己気密修復機構は、今でも尚、中心領域が複製に成功していないものの1つである。それ故に、この型のバトルアーマーは、中心領域が製作したバトルアーマーより遥かに優れた能力を未だに保持しているのである。
 今日、このバトルアーマーはシーフォックス氏族の商人達(“聖戦”の時に、低価格での武器売却と引き換えにドラコ連合から設計図を入手していた)の手により中心領域のみならず、ゴーストベアー氏族、ウルフ氏族、ヘルズ・ホース氏族(ウルフ氏族より多くを奪取した)の間にも広まっている。
(唯一、ジェイドファルコン氏族のみは、「中心領域の害毒で損なわれたデザインである」と使用を拒否している)




ノーム・バトルアーマー

 “氏族戦争”の行われていた3054年、「全ての氏族が数世紀に渡って使用している“エレメンタル・バトルアーマー”に対抗すべく、中心領域が新たな大型の強襲バトルアーマー(後に“カナヅチ・バトルアーマー”として完成するもの)を開発している」という未確認の情報が氏族本国にもたらされた。
 この情報は、伝統的に歩兵戦力を重視するヘルズ・ホース氏族にとっては看過できないものであった。彼等にしてみれば、バトルアーマー開発に関する如何なる成功も、戦場に於ける自分達の優位を崩すものだったのである。
 故に、時のヘルズ・ホース氏族族長マラヴァイ・フレッチャーは、自氏族の科学者階級に強襲型バトルアーマーの開発を命じたのであった。
 ヘルズ・ホース氏族の科学者達は、自氏族の歴代のバトルアーマー開発失敗を参考に開発を進めた。そして、3056年、過去よりも発達した冶金・電子・人工筋肉技術は、新型の強襲型バトルアーマー=“ノーム・バトルアーマー”の開発を可能としたのである。

 この“ノーム・バトルアーマー”は、仮想敵の“カナヅチ・バトルアーマー”よりも軽量で機動力に若干勝っており、右腕に固定装備されたER小口径レーザーと肩部にストリークSRM2を装備した事により火力も申し分無いものであった。
 また、特筆すべきは、SRM6の直撃にも耐えられる、強靭極まりないその装甲である――このアーマーは、事実上、短時間の戦闘での排除が不可能なのである。
 平地では、その鈍重さから狙い撃ちにされ易いとはいえ、“ノーム・バトルアーマー”の有効性が完全に否定されるものではない。故に、このアーマーは、32世紀でも各勢力で使われているのであった。




ピュリファイアー・バトルアーマー

 この“ピュリファイアー・バトルアーマー”は、元々はコムスターが開発を行っていたものであるが、3058年の“地球”の陥落によりワード・オブ・ブレイクの手に渡り、かの狂信者達によって大量に使用された事で悪名高い存在である。

 “ピュリファイアー・バトルアーマー”の特徴は、その装備された先進的なアクティブ・ステルス能力にある。驚くべき事に、このバトルアーマーは、アーマーの各所に設置されたセンサーの情報を基にその装甲の色を変化させ、周囲の地形に完全に溶け込む事を可能としているのである。そして、新たに開発されたTAGやミサイルビーコン投射機の装備により、本バトルアーマーは凶悪極まりない観測ユニット、伏撃ユニットとなったのであった。
 この能力故に、“聖戦”の終結後も“ピュリファイアー・バトルアーマー”は各陣営で使用され続ける事となり、32世紀でもその姿が各所で見られているのであった。




ホーバーク・バトルアーマー

 “ホーバーク・バトルアーマー”は、ゴリアテスコーピオン氏族の開発した“ウンディーネ・バトルアーマー”を祖として開発された長距離攻撃バトルアーマーである。
 3069年、ワード・オブ・ブレイクとの“聖戦”を戦う恒星連邦にとって、戦場へ配備するバトルアーマーを確保するのは急務であった。故に、連邦はダイヤモンドシャーク氏族より“ウンディーネ・バトルアーマー”を購入した……だが、このバトルアーマーは性能的に優れた存在ではあったのだが、その水中での戦闘に特化した性質上、高価で無駄な部分もあり(特にダイヤモンドシャーク氏族がハージェルの購入に付けた金額は高かった)、恒星連邦の求めるものとは些か違っていたのであった。
 かような次第で、NAISの手により“ウンディーネ・バトルアーマー”は恒星連邦軍の要求する仕様に再設計される事となり、“ホーバーク・バトルアーマー”が誕生する事となったのである。
 “ホーバーク・バトルアーマー”がロールアウトしたのは、3070年の事である。このバトルアーマーは極めて鈍重でジャンプ能力も欠いていたが、LRM5と小口径レーザーと“インフィルトレーターMk.II・バトルアーマー”のステルス機構の搭載に成功した、長距離火力と隠蔽性を兼ね備えたアーマーとして完成していた。そして、“聖戦”に於いてその特性は遺憾無く発揮され、到る所でブレイク教徒を待ち伏せしては痛撃を与えたのであった。

 今日でも、“ホーバーク・バトルアーマー”は現役であり、特に、恒星連邦軍とスフィア共和国軍では一般的な存在である。




キャバリア・バトルアーマー

 3058年、“インフィルトレーターMk.II・バトルアーマー”開発の目処がついたAFFC(恒星連邦軍)が次に考えたのは、「中心領域の標準となるバトルアーマー」の開発であった。
 過去に恒星連邦はバトルアーマー開発の先端を走っていたが、既に他の王家でもバトルアーマーは一般的なものとなっており、恒星連邦としても国軍の標準となるバトルアーマーの整備が必要となっていたのである。
 恒星連邦が注目したのは、ドラコ連合の“ライデン・バトルアーマー”であった。“ライデン・バトルアーマー”は、性能的には中心領域の標準といった所であったが、その外観は彼等の文化的特性(日本の伝統的デザイン)を反映するものであり、非常に印象的なものだったのである。
 かくして、恒星連邦は“ライデン・バトルアーマー”のデザイン・コンセプトの採用を決定し、彼等のアイデンティティをデザインに盛り込む事にした。そして、開発は順調に進み4ヵ月後には、「ダヴィオンの魂を象徴するようなデザイン」である“キャバリア・バトルアーマー”は完成したのである。

 “キャバリア・バトルアーマー”は、古の騎士が纏う鎧の如き外観をしており、恒星連邦の象徴となった。
 また、性能的には並であったが、量産性に優れ、安価なこのアーマーは広く普及する事となった――“キャバリア・バトルアーマー”は、32世紀でも多くの陣営で使われているのである。




ホバーバイク隊

 “ホバーバイク”は1人の歩兵に更なる機動力と速力を与えるべく、スフィア共和国の手によって製作されたものである。
 3tの車体に副武装として無反動ライフル、対装甲ロケットランチャーを積んだ本車は、その高速性を生かして偵察・索敵・潜入・遊撃戦等々、様々な任務に用いる事が可能である。特に、潜入偵察任務に於いては、小型の車体である事から通常車輌では進入不可能な地形にも入る事ができ、非常に有効な働きをする。
 “ホバーバイク”には使用者によって様々な改造がされており、その形態は千差万別である――主武装にオートキャノンを据えた型、SRMを搭載した型、電子装備を増強した型、etc……。
 戦場では、複数の“ホバーバイク”で構成された“ホバーバイク隊”がしばしば見られる。この捕捉が難しく、短時間での撃破が困難な機械化歩兵部隊は、メックにとっても厄介な存在である。




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