スフィア共和国

 “聖戦”に於ける最大の功労者である“デヴリン・ストーン”の手により、3081年に建国された新国家。共和国は軍備の削減・民族間の宥和政策が効を奏し、中心領域で最も平和で豊かな国家へと発展していった。
 だが、3132年のコムスターのHPG通信網の遮断は、共和国の各勢力の抗争を表面化した。そして、“デヴリン・ストーン”のいない今、それを止められる者はいない。

 当初は、以下の7つの勢力に分かれて内戦を開始していた。国軍、スフィア騎士団は事態に対して有効な手を打てなかった。共和国軍は外部の敵に備える専守防衛軍としての役割のみをドクトリンとし、平和な時代に軍備を削減して書類上のみの存在になっていた部隊が多数存在していた事(特に第3、第4、第9宙域に於いて)が、対応が後手に回った理由なのかもしれない。
 最終的には、新たに総統に就任したジョーナ・レヴィンは当面の国内安定を放棄し、デヴリン・ストーン時代に秘密裏に策定されていた絶対防衛線“フォートレス・リパブリック”を発動。スフィア共和国内の全軍を第10宙域とその周辺の選ばれた惑星に引き上げ戦力を集中すると共に、防衛線を封鎖して外部との交流を一切絶った。以後、外部から防衛線内に侵入した航宙艦は、全て消息を絶っている。外部との交流を絶っている理由や、どういう手段で封鎖を完璧に維持しているのかは、現時点では不明である。
 これにより、事実上見捨てられた防衛線外の地域は外部勢力に急速に吸収されていく事となった。現在は、ソードスォーンが恒星連邦に、スピリットキャッツとドラゴンズ・フューリーがドラコ連合&ノヴァキャット氏族に、ストームハンマーズがライラ共和国にほぼ吸収されている。


ハイランダーズ→スフィア共和国に吸収される。その一部はスフィア共和国軍のハイランダーズ大隊として“レムナント”にて活動中。


ドラゴンズ・フューリー→ドラコ連合に吸収される。


ソードスォーン→恒星連邦に吸収される。


バンソンズ・レイダーズ→ジェイコブ・バンソンに対してスカージが反旗を翻す。現在、ジェイコブ・バンソンはスカージに捕らわれて行方不明。


スチール・ウルヴズ→ウルフハンターズと旧・スチール・ウルヴズ派に分裂。後に、旧・スチール・ウルヴズ派の一部はウルフ氏族に吸収され、その他の一部は傭兵部隊となった。


ストーム・ハンマーズ→ライラ共和国に吸収される。


スピリット・キャッツ→ノヴァキャット氏族に一部は吸収されるが、リカード・ノヴァキャットに率いられたその他の者達はケヴ・ロスの予知視にあった“避難所”の探索行に今も就いている。


ウルフハンターズ→傭兵部隊として活動中。

 

ドラコ連合

 ドラコ連合自体は変わらずに強大な存在ではあるが、クリタ家は昔に比べると勢力を減じ弱体化している。また、“聖戦”で共闘をした事から、過去に仇敵であったゴーストベアー氏族との関係は多少なりとも改善されているようである。しかし、“聖戦”での経緯からレイヴン同盟との関係は表面的には最悪のままである。また、恒星連邦との国境紛争は続いており、対立関係は続いている。

 3135年、一将軍の暴走からドラコ連合はなし崩し的にスフィア共和国への侵攻を開始したが、惑星“ディーロン”を奪還した所で非常に奇妙なジャンプ事故により次期大統領指名者セオドア・クリタが死亡。それから間もなくして、ヴィンセント・クリタ大統領が暗殺された事により、政治的な混乱状態に陥る。現在の暫定指導者は、ヨーリ・クリタ。
 

 

恒星連邦

 70年の時を経た現在でも、恒星連邦の体制は然程の変化はしていない。国の中枢はダヴィオン家、カペラ境界域はハセク家、ドラコ境界域はサンドヴァル家が変わらず統治を行っている。先代のダヴィオン国王がハセク家に娘を嫁がせた為、現在のハセク家当主はハセク=ダヴィオンの性を名乗っており、今のダヴィオンとハセク家の密接な関係を示唆するものとなっている。

 恒星連邦国王は3135年までは“ハリソン・ダヴィオン”、カペラ境界域支配者は“アレクサンダー・ハセク=ダヴィオン”となっていた。HPGネットワーク停止後も、恒星連邦国内はスフィア共和国に比べれば多少は平穏と言える情勢であったが、カペラ大連邦国国境地域での紛争の拡大は激しさを増しつつある。軍には大規模な動員令が発動されており長年の宿敵であるカペラ大連邦国への対応を試みているが、大規模な軍縮で削減された軍を往年の状態に戻すには後数年は必要と思われる。
 ハリソン・ダヴィオンの不可解な死亡によりその政治情勢は混乱しつつあり、スフィア共和国の旧・恒星連邦領への軍の進駐等、迷走を深めている様に見える。後継者と目されているケーレブ・ハセク=サンドヴァル=ダヴィオンが今後事態を打開できるような指導力を発揮できるかどうかは定かでない。

 

ライラ共和国

 ライラ共和国の工業力・経済力は、32世紀でも巨大なものがある。スフィア共和国の持つ底力を確信しているライラ共和国共和国は、ストームハンマーズを支援しつつも本格的な進行には及び腰である。

 3138年現在、ライラ共和国はウルフ氏族と秘密同盟を結び、彼等と連合軍を形成して自由世界同盟に侵攻中である。数十年間続く国境紛争に終止符を打つのを目論んでの事であるが、果してこれはうまくいくのであろうか?

 

自由世界同盟

 自由世界同盟は、“聖戦”で最も打撃を受けた国であるかもしれない――国家内部から蜂起した“ワード・オブ・ブレイク教団”の手により、一度は国家体制自体が崩壊したのであるから……。現在は小国家の乱立する緩やかな連合体になっている。(星間連合国家といえる勢力は、アンドゥリエン公国、オリエント保護国、マーリック=スチュワート共和国、レグルス領国、辺境共和国、タマリンド=アビー公国の6つである。また、6国に属していない星系が多数存在し、広大な緩衝地域、紛争地域を作り出している)

 レグルス領国とマーリック=スチュアート共和国の武力紛争に見られるように、現在でも争いは絶えない。その上、3人のマーリック家の後継者達――アンソン・マーリック、ジェシカ・マーリック、フォンテイン・マーリック――が玉座を巡り闘争しており、混沌とした状況をより深めている。“聖戦”時の“トーマス・マーリック総帥”(少なくとも、そう名乗っていた人物)の裏切り行為(少なくとも、当時の人民の大部分はそう思った)により、自由世界同盟の総帥職は事実上廃止(この役職は実質的な権限を現在は失っている)され、最高権力者と言える役職は同盟内に存在しないようになっている。
 現在、ライラ共和国とウルフ氏族連合軍の侵攻を受け、マーリック=スチュアート共和国が崩壊。この事態に対し、自由世界同盟復活の運動が起きているが、実を結ぶかどうかは定かではない。

 

カペラ大連邦国

 カペラ大連邦国は、あの熾烈極まりない“聖戦”に於いても他国家との合同を拒否し、独自に“ワード・オブ・ブレイク”教団と戦いを続けた国家である。当時の首相であるスン=ツー・リャオのプライドがそうさせたのかもしれないが……この国のある側面を示すものとも言える。3081年に父祖の地を新たに建国されたスフィア共和国に奪われた事から、スフィア共和国には悪感情を持っており、たびたび紛争を起こしている。

 現在の首相である“ダオシェン・セントレラ=リャオ”も領土奪還に意欲を燃やしている。父の狡猾さと祖父の狂気を受け継ぐと評されている彼は、ジェイコブ・バンソンを使った一連の陰謀、スフィア共和国第5宙域への侵攻の大成功等々で、その才覚を証明している。軍縮をせずに秘密裏に強化していた軍の存在は圧倒的であり、今後も事態のイニシアチブを握り続けると思われる。

 

レイヴン同盟

 外世界同盟は、文明放棄主義者達の手によって作られた国家である。その国家が氏族の1つである権謀術数に長けた“スノーレイヴン”と共同体を形成したのは非常に奇妙に思える。或いは、両者が気圏戦闘機に対して等しく持つ偏愛の念が互いを結びつけたのかもしれない。歳月を経て国内の矛盾は拡大しつつあるが、同時に体制も固まってそれなりに安定している。宿敵ドラコ連合との緊張状態は続いており、その国境での紛争は耐えない。しかし、“聖戦”での以後の経緯により恒星連邦とは多少良好な関係を築いている。

 現在の所は、スノーレイヴン氏族は表立った行動を起していない。しかし、軍縮により武装解除やモスボールをしていた強力な戦闘航宙艦群の現役復帰を進めているとの未確認情報もある。

 

ウルフ氏族

 “聖戦”に於いて中心領域を助けて勇敢に戦ったウルフ氏族は、聖戦終結後に追放ウルフ氏族(ウルフ・イン・エグザイル)と(完全ではないが)ある程度の緊張緩和を果し、その多くがカーチャ・ケレンスキー(ナターシャ・ケレンスキーの氏族的な妹)に率いられてスフィア共和国に移住した。彼等が新たなる居住地に選んだのは“フレッチャー”星系、“シェラータン”星系であったという。主惑星の濃密な大気、寒冷な気候、深い森林が肌に合っていたからかもしれない。氏族の伝統を重視する者達は、本国・占領地に残り、今日も氏族の名声を高める為の鍛錬/神判に余念がないようである。

 今日でもウルフ・イン・エグザイルとは分裂したままだが、交流関係は保っており、昔ほどは敵対的でなくなっている。

 現在のウルフ氏族族長は、“セス・ワード”である。彼はライラ共和国と同盟を結び、氏族全てをライラ共和国と自由世界同盟の国境地帯に移動させて侵攻を行っている。この大胆過ぎる方策の結果はどうなるのであろうか?

 

ジェイドファルコン氏族

 “聖戦”時に勃発した氏族本国での内戦により本国の領地を失い、本国との連絡をも切断され、その上、後背に3060年代に被った損害への復讐心に猛り狂ったヘルズ・ホース氏族を迎える事となったジェイドファルコン氏族は、不本意ながらも中心領域とある程度の妥協をしなければならなかった。占領地の民心を安定させる為の規制緩和、中心領域の流儀の一部容認、インダストリアル・メックによる民間インフラストラクチャーの積極的な整備、等々……。氏族の伝統を最も重視するジェイドファルコンといえども、生き残る為には時代の変化に適応せざるを得なかったのである。
(しかし、ともかくも、変革を実行・許容できる所に、この氏族の柔軟さと強かさが現れているとも言えるであろう)

 現在でも、ジェイドファルコン氏族は自らの力を高める神判には熱心であり、ライラ共和国と国境線の惑星を巡って激しい戦闘を繰り広げ、巨大な紛争地域を作り出している。また、地球方面への侵攻ルートを封鎖しているウルフ氏族から領土を奪取すべく、たびたび神判を挑んでもいる。

 3134年のライラ共和国とスフィア共和国への電撃的侵攻が停滞した事を原因に、急進派と保守派との対立から内戦が勃発。この内戦はマルヴィナ・ヘイゼンが勝利をし、前族長ジャナ・プライドは死亡した。この氏族の一部では過激な“総力戦”思想が広まりつつあり、識者を憂慮させている。

 

ノヴァキャット氏族

 3060年にドラコ連合に移り住んで以来、変わる事なくノバキャット氏族は現在もそのエキセントリックな性質――彼等は他から見ると奇妙極まりない“予知視”に基づく行動様式を重要視している――を保持したまま過ごしている。しかし、近年ではそれに懐疑的な者達が増加し、その氏族内では自らのアイデンティティを巡っての動揺が広がっており、それが将来の氏族の道筋に危険な影響を与えるとの懸念も生じている。

 HPGネットワークの遮断後、彼等は沈黙を守っていたが、ドラコ連合の援軍派遣要請に応じ1個銀河隊をスフィア共和国に送り込んだ。そして、ある神判の結果、スフィア共和国のスピリット・キャッツ勢力の幾らかを自らに取り込む事となった。

 

ヘルズホース氏族

 リーヴィング戦争により“聖戦”期間中の中心領域に移住する事となったヘルズホース氏族は、“聖戦”とその後をうまく生き延びた。移住先での現地住民達との融合はかなり順調に進み、彼等の新領土は安定していったのである。しかし、列強に挟まれたその領土の地政学的位置は心地良いものではなく、その圧迫感から彼等の間には過激なモンゴル・ドクトリンと称される総力戦哲学が蔓延する様になっていった。

 HPG網の崩壊後、ヘルズホース氏族は特に動きを見せなかったが、3135年になってジェイドファルコン氏族とその一部の軍(ファイアーホース・ギャラクシー)が行動を共にするなど奇妙な動きを見せている。

 

シーフォックス氏族

 彼等は念願叶い、ダイヤモンド・シャークから元のシーフォックスにその名を戻す事ができた。また、氏族領域から中心領域に大挙して移動し、宇宙を放浪しながら生きるという生活様式を作り上げている――野放図な通商活動の結果ではあるようだが……。根っからの商人の集団であるシーフォックス氏族は、今日も銀河を交易に飛び回っている。彼等こそが中心領域に一番馴染んでいる氏族かもしれない。

 HPGネットワークの遮断後、彼等は惑星“ディーロン”の所有を求めて神判を発動し、スフィア共和国軍、ドラゴンズ・フューリーと激突したとの事である。彼等は戦乱から利益を得ようとしているのであろうか?

 

ラサルハグ・ドミニオン

 “ラサルハグ共和国”と“ゴーストベアー氏族”が合体した統一国家。3067年以降のラグナー王子の努力が実を結び、ラサルハグは復活した。両者の思想を融合させて、国家としての統一感を作り出す事はうまくいっている模様。
 しかし、今の体制を“真のラサルハグの民の国家ではない”として、レジスタンス活動を粘り強く続けている勢力が少数だが存在している。この国の試練は尚も続いているのかもしれない。

 彼等は3136年に、“平和維持軍”との名目でスフィア共和国に進駐した。彼等の行動は野心から来たものなのであろうか? それとも?

 

マリア帝国

 “聖戦”終結以来、マリア帝国は疲弊した自国の建て直しと復活したロージアン連盟との紛争に明け暮れていた。HPG網の崩壊でマリア帝国も打撃を受けており、中心領域に侵攻する余裕はないと思われる。しかし、海賊を支援して元・自由世界同盟構成国群を攻撃させているとの噂もあり、何らかの野望を抱いている可能性はある。

 

カノープス統一政体

 “聖戦”以来のカペラ大連邦国との密接な関係は現在も続いている。3134年のカペラ大連邦国のスフィア共和国侵攻には、実際に軍を派遣してカペラ大連邦国を支援してもいる。また、アンドゥリエン公国の統治者とも婚姻関係を結んでいる事から、カノープス統一政体はアンドゥリエン公国とも親密になっている。

 カペラ大連邦国と手を結ぶ一方でそれの長年の宿敵であるアンドゥリエン公国とも手を結ぶというその奇妙に捻れた国際関係は、今後に多大な出来事を生じさせる可能性があるものである。

 

タウラス連合国

 “聖戦”で被った打撃、カルデロン保護国との冷戦、それ以後に成立した軍事主義的傾向の政権の支配が数十年間にも渡り続いた為に、タウラス連合国の景気は沈滞し雰囲気も暗い。だが、同胞同士での戦争に疲れ果てた両国民間での和解の空気は急速に醸成されつつあり、関係改善が期待されていたのが明るい材料ではあった。しかし、HPG網の崩壊によりコミュニケーションの大部分が絶たれた為に、最近ではこれといった進展はない。

 

カルデロン保護国

 3060年代後半に、3国同盟(カペラ大連邦国、カノープス統一政体)によって食い物にされるタウラス連合国から、カルデロン一族の血統とタウラス連合国の本来の国体・尊厳を護持するべく連合から独立した勢力。

 その命脈は現代(3135年)でも保たれている。タウラス連合国との和解の徴候はあるものの、HPG網の崩壊によりその先行きは不明となっている。

 

辺境連合

 3048年、元・辺境世界共和国に所属していた星々は数世紀の時を経て連合して小さな星間国家――“辺境連合”――を作り上げた。この辺境連合は自衛に集中して細々とであるが自らの基盤を固めていき、“聖戦”での混乱にも生き残った。彼等は特に大きな野心を持つ事なく堅実に行動し、3135年でも大戦争には関与せずに国家を維持している。

 

ロージアン連盟

 ロージアン連盟は一度は滅びたものの“聖戦”の終了期に占領者であるマリア帝国に対する反乱を成功させて復活を果たした。その後も、スフィア共和国等々により国家としての承認を受け、独立を保持している。

 3135年でもマリア帝国との紛争は絶えず続いており、ロージアン連盟は生き残りに苦心している。

 

フロンク領域

 カノープス統一政体とタウラス連合国の植民協定により作られた新・植民地(New Colony Region)が、3060年代後半にカペラ大連邦国の支援により独立して成立した国家。

 3135年には、軍事的には弱小と言えども沈滞したタウラス連合国を凌ぐ勢いである。

 

フィルトヴェルト連合

 “聖戦”での経緯により、恒星連邦に愛想を尽かして独立したフィルトヴェルト連合であるが、年月を経て恒星連邦との関係改善は進められた。HPG網崩壊後、その恒星連邦との相互支援関係は強化されている。

 

トルトゥーガ領

 海賊達の根拠地となっている“トルトゥーガ”を中心とする宙域は、トルトゥーガ領と呼称されている。国家じみた形態になってはいるが、これを国家と読んでいいのかどうかは疑問符の付くものである。HPG網の崩壊後は、その実情がどうなっているかは不明である。

 

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