バトルテックの世界は32世紀を迎える過程で大きな変化を遂げています。
 そして、“現在”のメックウォリアー:ダークエイジの世界を構築した最も中心的な人物といえば――

 彼、“デヴリン・ストーン(Devlin Stone)”を於いては他に存在しないでしょう。

 彼は中心領域(イナースフィア)をワード・オブ・ブレイクの狂信者達から救い、革新的な政策で以って軍縮を推し進め、平和をもたらしました。また、5王家の抗争の元凶とも言える旧・地球帝国領に“スフィア共和国”を建国し、各民族の混交する一種の緩衝地帯&人民間の融和の場としての働きをさせました。その結果、5王家間の争いは減少し、民族間の融和も進みました。

 彼は戦争と戦争を生み出す原因となる派閥を憎み、それを追放する事に努力をしたのです。そして、彼の試みは成功する事になります。ただ、それは彼の持つ絶大なカリスマ性に依存したものだったのかもしれません。皮肉な事に、彼の失踪と同時に、強固に見えた平和の世は崩壊する事となりました。

 果たして、失踪した彼は3132年の状況にどのような思いを抱いているのでしょうか? 絶望? それとも……? 恐らく、彼は(生きていれば)何らかのアクションを起すはずです。それが中心領域に何をもたらすのか? 注視すべきでしょう。

 以下はコムスターが調査した彼の経歴です。


「彼は3042〜3043年に生まれたものと思われる。彼が何者であるかは、ワード・オブ・ブレイク教団が壊滅した今では残念ながら解明は難しい。

彼がワード・オブ・ブレイクの再教育施設に収容されていた理由は、今となっては全く不明である。ワード・オブ・ブレイクが彼を使い如何なる事を企んでいたのか? 歴史の永遠の謎と言えよう……。

3067年、ワード・オブ・ブレイク教団の狂信者達は中心領域の全国家に対する闘争を宣言。“世界は自分達の下でブレイクの訓えに従い管理されるべきである”とし、侵略を開始した。連邦=共和国内戦の傷跡の癒えていない、恒星連邦、ライラ同盟、ドラコ連合は苦戦を強いられた。

3070年は、中心領域にとって最も苦しい時であった――自由世界同盟はほぼ崩壊し、セオドア・クリタも死亡したのである。

3071年、デヴリン・ストーンはワード・オブ・ブレイク教団の再教育施設からの脱走に成功、抵抗軍をあの高名なるメックウォリアー“カイ・アラード=リャオ”の息子であるデイヴィッド・リーア教授と共に組織。奇跡的な反撃を実施した。

3073年、ディヴィッド・リーアはワード・オブ・ブレイク教団への抗戦を続けている中心領域列強の指導者達にデヴリン・ストーンを紹介。
デヴリン・ストーンはその場で、戦争の永久サイクルを終らせる為の計画を提示。ヴィクター・ダヴィオンに強い印象を与えた。
再結集に成功した連合軍は徐々にワード・オブ・ブレイク教団を押し戻していった。

3081年、ワード・オブ・ブレイク教団の本拠地“地球”が陥落。“聖戦”は終結した。この時には誰もが、デヴリン・ストーンの見識/手腕を等しく認め、大いなる尊敬を抱いていた。

そして、3081年、ヴィクター・ダヴィオン、ホヒロー・クリタ、アナスタシアス・フォフトと大多数の一般民衆の賛同の下に、デヴリン・ストーンが首班の地球を基点とし半径120光年を領土とする“共和国”が新たに誕生。
この共和国を認めずに最後まで抵抗したカペラ大連邦国も、3085年にはスン=ツー・リャオが交渉のテーブルにつきチコノフ条約の締結により認めざるを得なかった。

彼の人民間宥和政策(大規模な移住実施により各民族が均等の割合で混交する地域を国家全体に作り出す事)と軍備削減計画(バトルメックの解体を促進する計画)は大きな成功を収め、列強の王家と氏族(クラン)占領地域にまでその効果は波及していった。
(結果バトルメックは大きく全体数を減らす事になり、その生産力も限られたものになっていった。特に小型核融合エンジンの需要の減少は、関連工場の多くを閉鎖に追いやった)

3113年、カペラ大連邦国の内戦を巡る紛争を解決。共和国領域に安定を訪れさす。

3130年、デヴリン・ストーンは公的地位からの引退を表明。そして彼は失踪した……」



 さて、謎めいた経歴の彼ですが、幾つか、その正体を示唆する手掛かりが上記の文中にあります。
ワード・オブ・ブレイク教団の再教育施設に入れられていた事と、名前、推定生誕年です。

↓は、彼の正体に関するネタバレかもしれません。ドラッグすれば見えます(ネタバレが嫌な人は見ない事をお勧めします)

 バトルテックの小説“Patriots and Tyrants”にて、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンの実弟“アーサー・シュタイナー=ダヴィオン”は爆弾テロにより吹き飛ばされ、死亡したと思われました。そして、この彼の死が、連邦=共和国内戦勃発の引き金となりました。しかし、実の所、彼は生きており、謎の密室に監禁されていました。内戦を起したい勢力が彼を利用しようとしたのは明白です――ワード・オブ・ブレイク教団ですね。これ以後、彼の存在は歴史の表舞台から消える事となりました。
 後にデヴリン・ストーンはデーヴィッド・リーアと協力関係にある事も、これの補強になります――元々、彼等は面識があったのでしょう。

 また、アーサー・ダヴィオンの生誕年は、デヴリン・ストーンの推定生誕年に近いと言えます。

 更に、Devlin Stoneはアナグラムすると、DavionとStinerになります。

 以上より、彼の正体は、“アーサー・シュタイナー=ダヴィオン”と思われます。

 (注: あくまで小説の記述から読み取った憶測ですので、間違っている可能性はあります)


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