狼の牙(唸る狼)

(これは、WizKidsのFFEマーキー・イベント、“Fire for Effect Marquee: Snarling Wolves”の暫定訳です。メックウォリアーのキャンペーンへの一助となる事を意図してのものです。警告/問題があった場合は即座に削除します)

背景:

 スチール・ウルヴズでの彼の指揮に反対する声を沈黙させる為の活動の1つとして、カル・ラディックは惑星“シェダル(スケダル)”を奪取する為の軍勢を自ら率いた。しかしながら――もし、彼がウルヴズ内での対抗者を叩き潰す為に、この勝利を利用する事を望むのならば、彼はこれより少し前に到着したバンソンズ・レイダーズの軍勢への対処をしなければならないであろう。


ストーリー:

 スチール・ウルヴズでの彼の統率力と戦闘能力に対して疑問を声高に発し始めている一部の部下達の存在は、カル・ラディックに自らが軍を率いて征服作戦を開始する事を決断させた。自身の統率技能と軍事的識見、双方の披露を試みる場として、ラディックは惑星“シェダル”の征服を選択した。そこは、現在は主として民生品の生産を行っているが、(過去)数世紀間に渡って軍用の通信機材を供給していたからである。また、彼の知り得る限りの情報では、そこを守る唯一の防衛軍は、最近になり到着したバンソンズ・レイダーズの派遣軍のみだったのである。しかしながら、カルの作戦が進行されている正にその時に、彼の対抗者は作戦に対して、“その惑星は戦略上、重要なものではなく、また、バンソンはスチール・ウルヴズが対処する価値のある敵ではない”と言い、非難したのであった。ラディックが自身の指導への対抗者を圧殺し、彼のウルヴズを大いなる栄光へと導けるかは、時間が経過しない事には何とも言えないであろう……しかし、まず最初に、彼はこの惑星で勝利しなければならないのである。



カル・ラディック
進入軌道、“シェダル”、第4宙域、スフィア共和国

 よくもまあ、私の権威に挑戦するものだな?その思考は、ギャラクシーコマンダー・カル・ラディックの頭蓋内で鳴り響いていた。まあ、もはや、彼等は私に疑念を抱けなくなるだろうがな!

 “シェダル”の大気圏上層の乱気流の中を急降下していくマッドキャットIIの操縦席に固く結び付けられたカルは、自分の将来について熟考した。彼を中傷する者達が彼の軍事能力への疑いを抱き続けたにも拘わらず、彼は自分の能力に疑いを抱く事はなかった。詰まる所、自分は“シブコ”から抜きん出て、“階級の神判”を通過したのではないのか? 自分は“トゥルーボーン”ではないのか?

 反論を一切せずに、彼の対抗者達のコメントが降りかかるままにさせておくのは腹立たしかったが、カルは熟知していたのである――もし、中傷に対して彼が頻繁に応じたのならば、中傷者達を一層、活気づかせる結果となる事に……。この戦闘は彼の地位を確固としたものにし、スチール・ウルヴズ内での彼の指導力に対して行われる全ての反抗を追放できるであろう。

 激しい振動と共に彼のメックのアヴラティブ・コクーンの継ぎ目に沿って爆発ボルトが爆発し、降下殻を切り離した。今、危険な大気圏を通り抜けたのである――突然、通信機が絶え間なく続く作動音と共に静寂に満ちた。地上まで、まだ3Kmもの距離があるが、カルは自身のマッドキャットIIのジャンプジェットが完全な稼動状態であるかを確かめる為に素早いチェックを行った。結果に満足した彼は、武器を稼動状態にし、次に直面するであろう脅威への対処を始めた――降下中の彼のメックを気圏戦闘機(エアロスペース・ファイター)が襲撃してきたのである。
(注:アヴラティブ・コクーンは、大気圏からの降下を行うメックに取り付けられる降下用の保護殻です)

 カルは、射撃を敵に向け、そしてその時には既に、彼は地上に降りた後の次の脅威について思考を巡らしていた。そして、その次の脅威へと、そしてまた、その次の脅威へと……。



ステファニ・エーリ
ジャクソンビル近郊、ラナース主地下工場入口近傍、“シェダル”、第4宙域、スフィア共和国

 ステファニは、燃え盛る星が高速で視界を横切り、別の方位からの射撃を受けてゆっくりと破壊されていき、数ダースの白熱の光を発する小穴が増えていくのを見て、感情を失った――ジェリーのイーグル気圏戦闘機は最終的に爆発し、破片の雨を撒き散らした。破片は、ステファニの握り締められた拳よりは大きくなかった。

 「我々は、上空援護(エアカバー)を失いましたな」彼女の副官は言った。ステファニは、このあまりにも馬鹿馬鹿しいまでの明確さに満ちた副官の言動へ、論評を加えたい衝動を抑えた。ジェリーについては、あまりにも最悪であった。彼女は、彼を好きだったのである。

 下界の眺望――この地区は、全体的にゆるく曲がりくねった砂丘が交差しているものであった。故に、彼女は静かな空へ向かって高く昇っていく一群の煙を見る事ができたのであった……撃墜された彼女の部隊の航空機を焚木とする葬送の煙を。スチール・ウルヴズ軍が軌道からの進入を終え、着地前の減速を行った事により、炎の小雨の如く、ジャンプジェットから湧き出るプラズマの飛沫が彼女の前方の光景に降り注いだ。

 「彼の軍勢と戦闘を行うのを、我が軍の小数機の戦闘機についての確認が終るまで待たれてはいかがでしょうか?」

 「過ぎてしまった事よ(Water under the bridge)」ステファニは静かに言った。「彼等も2つのユニットを失っている。私の辞書に於いては、悪くない取引よ」――この言は、明らかに嘘であった。しかし、彼女の副官は、彼女に対して何も問い質しはしなかった。

 彼女の唇は、冷笑で歪んだ。あの犬どもを打ち倒す時が来たのである。




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