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第4次継承権戦争: セントアンドレ戦 |
セントアンドレ
惑星“セントアンドレ”は、第1波の際に最大の激戦が戦われた場所である。ジョナサン・リーフェンベルグ上級大将は、ダヴィオン軽近衛隊RCT、第12ヴェガ特戦隊のアルファ連隊とベータ連隊で構成された侵攻軍を指揮した。リーフェンベルグ上級大将は、小規模であるが頑強であるカペラの部隊群――ジャスティニア重装機兵隊、コクレイン巨人隊、ブラックウィンド・ランサーズ第1大隊、と自分が対戦する事になるのを知っていた。
第12ヴェガ特戦隊のアルファ連隊にとって、戦闘は非常に地味に始まった。その3個大隊は、ジャスティニア重装機兵隊が待ち構えている都市ジェローム近くの広大な平地に降下した。ジャスティニア重装機兵隊のエリート・メック部隊は、ヴェガ特戦隊がジェロームへ慎重に接近し、その後に包囲をした際にも、何も行わなかった。両陣営のどちらも、最初の2週間は小競り合い以上の何かを望んで行いはしなかったのであった。
そして、ヴェガ特戦隊は、ブラックウィンド・ランサーズの攻撃下にあるベータ連隊の“訓練大隊”からの必死の請願に応えて、2個大隊を南方に派遣した。このジェロームを包囲するヴェガ特戦隊の2/3の離脱は、ジャスティニア・ゴードン大佐による攻撃の切っ掛けとなった。彼女の部隊は都市から飛び出し、数で劣勢にあるヴェガ特戦隊の大隊を攻撃した。
しかし、これは計略であった。特戦隊の2個大隊は、それ程遠くまで移動していなかったのである。第1大隊は、他の大隊に加えてダヴィオン軽近衛隊RCTとヴェガ特戦隊のベータ連隊の援軍が到着するまで防御戦闘を戦った。この戦闘は激烈なものであったが、ゴードン大佐には絶望的なものとなった――彼女は自軍の兵装の半分と人員の1/3を失った後に降伏した。
この成功した待ち伏せ攻撃の要点は、ブラックウィンド・ランサーズがヴェガ特戦隊のベータ連隊のベースキャンプを襲った事にこそあった。彼等はその地域を防衛しているとされる新兵達の大隊を発見する代わりに、新兵の集団と言うには程遠い存在であるダヴィオン軽近衛隊の第3大隊を発見する事となった。ブラックウィンド・ランサーズは熟練した戦士達であったが、この衝撃から立ち直る事はできなかったのである。広大な砂漠へ押し返されていったブラックウィンド・ランサーズの少数の者達は撤退するべく砂漠を疾走するのを試みたが、そこに地雷が埋設されているのを見出すのみに終った。ブラックウィンド・ランサーズの残余は、降伏をした。
その後、ダヴィオン軽近衛隊はブラックウィンド・ランサーズの司令部に向かって進軍した。一度そこに到着するとフー・クリストン大佐は、ブラックウィンド・ランサーズの管理スタッフと通信スタッフ達の降伏についての交渉をした。そして、その基地内で発見したコードと通信手順を使用して、ダヴィオン軽近衛隊の隊員達はカペラの無線チャンネル網を虚偽の戦闘レポートで以て溢れさせた。これらのレポートは、コクレイン巨人隊をジェロームの防衛機構から誘き出す計略を完成させた。
惑星北方大陸の凍った平原での戦闘は、“ラット作戦”の第1波の最中にダヴィオン軍が直面したものなかでも最も熾烈なものであった。ダヴィオン軽近衛隊の連隊群は、カペラによって発掘された星間連盟基地であるとAFFS軍事諜報が突き止めた新しい掘削場所の近辺に降下した。非常に危険な4脚メック・ゴリアテで以て大部分が編成されている1個大隊のコクレイン巨人隊が、この場所を防衛していた。そして、ダヴィオンの軍事諜報は通常は完璧なものであったが、この時はコクレイン巨人隊に付属されたカペラの気圏戦闘機大隊を見落としていたのである。
リャオの気圏戦闘機部隊の猛威は、ダヴィオン軽近衛隊の降下に大混乱を引き起した。ダヴィオン軽近衛隊メック連隊の第2大隊は30km以上も北に着陸してしまい、第1大隊から切り離されてしまった。
コクレイン巨人隊は即座にこの2つのダヴィオンのメック部隊を分断し、それらの撃滅を開始した。そして、第1大隊はカペラの2個中隊のゴリアテによる攻撃を受けた。ここでダヴィオンのメック連隊の指揮官であるストーン大佐は第1大隊に後退を命令し、その降下地域に降下したばかりのデルタ中隊の進路変更を試みた。
このデルタ中隊は、ユニークな存在であった。ハンス・ダヴィオン国王によって作られたこの部隊は通常の中隊の2倍の規模を持っており、その軽量級メックと中量級メック群を“近接強襲部隊”として用いる訓練を積んでいたのである。レッドバーン大尉は通信問題を装ってストーン大佐の作戦中止命令を無視し、代わりに自分の兵達をコクレイン巨人隊の背後に進ませた。
結果として起きたその乱戦に於いて、レッドバーンのデルタ中隊のメック群は鈍重なゴリアテ達に素早く接近した。そして、デルタ中隊のその数は、彼等に個々のカペラのメックを集団で袋叩きにするのを可能とさせたのであった。しかし、最初の攻撃は5機のゴリアテ・メックを倒したのであるが、レッドバーンの中隊は長く戦闘が続くにつれ圧倒されかけるという危機に陥った。
ここでレッドバーン大尉は、カペラ部隊の指揮官フィオナ・コクレインのゴリアテと遭遇した。そして、野戦に於ける天才的な勇敢な行動、もしくは狂者の行動と描写されるもので以て、レッドバーン大尉は“デス・フロム・アバヴ”機動として有名な攻撃を実行し、自分のファイアスターターをコクレインのメックのコクピットに激突させたのであった。――両方のメックは破壊された。レッドバーン大尉は生き残ったが、彼は衝撃で気絶し、続く戦闘に参加する事はできなかった。
その指揮官を欠いて士気を挫かれたコクレイン巨人隊の残余は、後退した。一方、レッドバーン大尉が自分達の為にその生命を犠牲にしたと思ったデルタ中隊は、復讐心で燃え立った。そして、ストーン大佐はこのイニシアチブを利用して攻撃をするべく自分の連隊の残りを再結集し、残るカペラのメック群を壊滅させたのであった。この情景の上空では、ダヴィオンの戦闘機群が自らの航空優性を行使していた。
コクレイン巨人隊の壊滅後、惑星“セントアンドレ”の組織的抵抗は崩壊した。ダヴィオン軽近衛隊RCTと第12ヴェガ特戦隊の2個連隊は、“セントアンドレ”に留まった。ダヴィオン軽近衛隊のデルタ中隊は、アラゴン国境隊の惑星“フーナン”での敵活動の鎮圧に協力する為にそのカペラ領の惑星へ赴いた。