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第4次継承権戦争: サーナ戦 |
サーナ
惑星“サーナ”への侵攻の諸相は、それをカペラ戦線の他の軍事行動から目立たせているものである。惑星“サーナ”は戦争後半に於ける最も重要なダヴィオンの目標であり、それは最も堅固に防衛されている惑星でもあった。そして、その攻撃は立案時のものとは異なり、ダヴィオン国王ではなくカペラ作戦軍によって詳細に立案されていた。また、この戦線の他の惑星に於いては、戦闘は短期間しか続かなかったが、惑星“サーナ”を巡る苦闘は戦争後半の全3波に渡って継続した。最後に、惑星“サーナ”での出来事は、戦線全体と恒星連邦の内地に政治的衝撃を持つものであった。ダヴィオンの1つの連隊戦闘団全ての壊滅からコムスターの“通信遮断”に至る事となる事件まで、惑星“サーナ”はダヴィオンの戦争努力を混乱させる枢軸となったのである。
ハンス・ダヴィオンが“ラット作戦”の立案者であり、その大戦略と詳細な作戦を立案したのであるが、彼は攻勢前半の4波の最中にCOCに対して時折だが独自の行動をする事を許していた。新たな侵攻の開始により、COCの上級大将達は、惑星“サーナ”が次の大攻勢にとっての素晴らしい開始地点かつ兵站センターになるであろう、と考えていた。彼等はまた、惑星“サーナ”の征服がダヴィオン国王――彼は征服が可能であろうと提唱していた――に感銘を与えるであろう、とも考えていた。しかし、この考えには欠点も同時に存在していたのであった。
前線からかなり離れた距離に位置していたこの惑星は、サーナ共和区の首都である事を除いて軍事的価値は低かった。航宙艦は惑星“サーナ”へ移動するには3ジャンプが必要であり、それにより艦のドライブ・コイルの充填を待つ為に無人星系にて待機しなければならなかった。この計画のもう1つの欠点は、惑星“サーナ”上に存在する軍事力に対する信頼できる情報の欠如であった。報告は、この惑星が少数の市民軍連隊と恐らく予備役の軽量級メックの2個中隊しか持ってはいない、と伝えていた。しかし、この情報は6ヶ月も前のものであったのである。
議論を最終的に決着させたのは、国王がCOCの上級大将達の進取的精神の不足に不機嫌になっていた事に対する彼等の懸念であり、彼等は大胆な計画で以て国王に気に入られようとした。この任務の実行の為に、COCは第5シルティス機兵隊RCT――国王に言及されていた部隊――を選択した。このシルティス機兵隊を支援するのは、傭兵部隊クレーター・コブラの2個連隊とスクリーミング・イーグルスの第2連隊、15個通常連隊であった。
シルティス機兵隊はその侵攻の任を果すのを熱烈に望んでいた――この時になるまで彼等は戦争外に留め置かれていたが故に、そして、マイケル・ハセク=ダヴィオン公爵殺害の復讐を彼等が望んでいたが故に。公爵の処刑についてリャオ首相が上げた喜びの声はシルティス機兵隊を激怒させており、その激怒はダヴィオン国王が彼等のカペラ大連邦国への即時の攻撃認可を却下した時に更に高まっていた。
ダヴィオン国王は惑星“サーナ”の作戦について伝えられた時に、故・公爵の老齢の叔母で第5シルティス機兵隊指揮官であるタマーラ・ハセク上級大将とその“戦闘”指揮官であるゴードン・ハートストーン大将と接触した。彼は彼等に対して、慎重になるのと怒りを制御するよう忠告した。
かつて誇り高きサーナ至上国の首都であった惑星“サーナ”には、昔日の面影はなかった。以前の3つの継承権戦争の猛威は、この惑星の産業をかつての力からすると取るに足らないものへとし、人口も90億人から20億人に減少させていた。しかしながら、惑星“サーナ”はサーナ共和区の象徴かつ政治的中心として重要であり続けていた。
惑星“サーナ”の5つの大陸の内、惑星の産業の大部分がそこに存在していた為に、ジャカルロスとカノーシャルのみが軍事的重要性を持っていた。この2つの大陸上の気候は侵攻の際には暑く湿気のあるものであり、ジャカルロスの湿地を貪欲な虫と肉食爬虫類達の巣窟へとしていた。
COCは、4つの降下地域を計画していた。クレーター・コブラの2個連隊は、主要な通信センターに近い“ノヴァ”と暗号名が付けられた降下地域と、工業センター近くの“スーパーノヴァ”と暗号名が付けられた降下地域を割り当てられた。第2スクリーミング・イーグルスは、都市バックタルに存在する小規模の兵器/弾薬工場の近くの谷“ブラックホール”を引き当てた。
第5シルティス機兵隊は自らが望んだ任務――惑星の首都であるサーナという割り当てを、獲得した。“パルサー”と暗号名が付けられた彼等の降下地域は、その都市の南方、グレーリバーの近くであった。第5シルティス機兵隊の高速部隊は都市に進軍し、重い部隊が追い着いてくるまでの間、キャピタル・ディストリクトを保持し、その地区を無傷のまま支配権を奪う、とされていた。
作戦は、開始時から問題が起きた。2つ目の無人星系FG5429にて、インベーダー級航宙艦FSS“ナイジェル”のジャンプ・ドライブが故障した。そして、“ナイジェル”の降下船群は他の航宙艦に移され、他の宇宙船の機関士達は“ナイジェル”の修理を手伝う為に乗船した。侵攻艦隊は、“ナイジェル”が自分達の後を追って最終的には“サーナ”に辿り着く事を望みつつ離れた。しかし、数ヶ月が経過するまで誰も知る事はなかったのであった――“ナイジェル”が爆発し、後に残った全ての人員を死亡させた事に。
“サーナ”星系への移動の残りは何事もなかったが、それも長く続くものではなかった。降下船群が惑星への移動を開始した1時間後、第5シルティス機兵隊を搭載した船が他よりも加速をして引き離した。ハートストーン大将は自分の部隊の真価を戦闘にて証明する事と公爵殺害の復讐をする事を熱烈に望んでおり、他の連隊が行う1.5G加速ではなく、通常の重力の2.5倍で加速するのを降下船群に対して命じたのであった。そして、この事はシルティス機兵隊が他部隊よりも2日以上早く到着する事を意味していた。ハートストーン大将は、それがシルティス機兵隊にとって自らの名を揚げるのに十分な時間である、と考えていた。
5月27日、シルティス機兵隊は妨害を受けることなくその降下を行った。グレーリバーの北方に着陸したメック群は、自分達が氾濫により残された膝関節までの深さの泥と水の上に着陸する事となった時に不愉快な驚きを感じる事となった。これにハートストーン大将は、戦車部隊と歩兵部隊の進路を素早く変更し、計画されていた着陸場所の北西の高い地面の上に彼等の降下船を着陸させた。
地上のシルティス機兵隊が劣悪な着陸場所について不平を零しているのと同時刻、惑星“サーナ”の低軌道にいた彼等の空荷の降下船群は惑星の地平から高速で接近してくる敵機の群れを探知していた。降下船群の乗員達には、100機以上のトランジット戦闘機、トランスグレッサー戦闘機、スラッシュ戦闘機に対する為に自分達の兵器に急いで飛び付くだけの時間しかなかった。
それらのカペラの戦闘機の群れは、軌道周回中の降下船群にその軌道を離脱するか、そこに留まって戦うかする事を強いた。カペラの戦闘機部隊が降下船群の護衛部隊を壊滅させた時、残存する降下船は惑星に向かった。その後、カペラの戦闘機群は惑星“サーナ”の大気圏に突入した。(この時)シルティス機兵隊の戦闘機部隊は偵察任務を終えたばかりで、カペラの戦闘機群が雲という覆いを突き抜けて掃射を開始した時には、その大部分は仮設飛行場にて推進剤の再補給と再武装の途中であった――カペラの戦闘機群は、ダヴィオンの気圏戦闘機大隊を掃射していった。
シルティス機兵隊のメック連隊指揮官アンソニー・ハークネス大佐は、携帯型ロケットランチャーを持ったカペラの兵士達が立ち上がりそれを射撃してきた時、第2大隊に泥濘からの脱出を命じたばかりであった。そのミサイル群の大部分は、大佐の光沢のある緑色のマローダーに狙いを定めていた。メックに命中したその全てのミサイルはポンと弾けて爆発してメックに透明なゼラチンを広げ、そして、それは巨大な白熱した炎へ燃え上がった。大佐は自分の炎上中のメックからの脱出を試みたが、彼がハッチを開けた時、燃えるネオ・ナパームのゼリーがそこに落ち込んできて彼を瞬間的に燃やし尽くしてしまう事となった。
第1大隊は、第2大隊の西方に降下していた。第1大隊のメック群が高い地面に辿り着くよりも前に、サバンナマスター・ホバークラフトと言う名の突風が彼等を襲った。その彼等の数と速度は、重量級メック群に災厄を引き起した。シルティス機兵隊の戦士達は、サバンナマスターの群れがその周囲を動き回りレーザーの射撃を浴びせてきた時にも、自らの機体の脚を僅かにしか動かせなかったのである。そして、数機のメックが倒されていたが、ホバークラフトの大部分は無傷で逃走したのであった。
第3大隊――比較的固い地面に着陸した唯一のメック群であった――は、カペラの気圏戦闘機部隊による反復攻撃に直面した。忍耐強い狼の群れの様に彼等は空の高い位置を取り、無防備となったシルティス機兵隊を掃射する為に自分達の出番を待ち続けた。シルティス機兵隊の歩兵部隊と戦車部隊も同様の攻撃下に陥ったが、彼等の降下船群がその強大な火力で以て支援を提供した。
傷ついたシルティス機兵隊は、それらの支援部隊による攻撃から立ち直った正にその時に、その主力の敵――マッカロン装甲機兵団――と対面した。この戦闘の遙か前、MIIOは“ビッグ・マック”の5個連隊の惑星“パロス”への移動を命じるメッセージを捕捉していた。リャオの最高の傭兵部隊が遙か遠くに離れるという事実は、COCが惑星“サーナ”侵攻について最初に議論した時にプラス方面に働いた主要因であった。
しかし、シルティス機兵隊は程無くして残る4個“ビッグ・マック”連隊の全てと対戦する事となったのである。第2大隊はハークネス大佐を失った後、カペラの市民軍を潰走させ丘陵に前進して入ったが、その時、第2大隊は丘陵の峰の背後に隠れていた第4マッカロン装甲機兵団のキル・ゾーンへ真っ直ぐに踏み込んでしまっていた。
マッカロンの戦闘機部隊からの逃走を試みているシルティス機兵隊の第3大隊は、森林の木立の中に遮蔽を見出した。しかし、航空攻撃が停止して間を置かずに、間接砲の砲弾の雨が降り注ぎ始め、森林を金属の稲妻と木の破片の嵐へと変えた。そして、第3大隊が森林からの離脱を試みた時、第3大隊は第3マッカロン装甲機兵団の只中に突入する事となった。
第1大隊――泥濘と戦闘中であり、マッカロンのメック群が北方から進軍中であるとの報告を受け取っていた――は、グレーリバーを渡河するべく南に向き直った。彼等は程無く気付いた――河は大きなメックを隠すには浅すぎたが、彼等が素早く渡るには余りにも深すぎるものである事に。マッカロンの第5連隊の部隊が河の上の丘陵の頂上に達して砲火を開いた時、彼等は河を半分も渡河していなかった。彼等は河岸に辿り着くまで前進しながら射撃をした。そして、そこは不運なシルティス機兵隊に余りにも近く、彼等は照準する必要も殆どなかったのである。これに生き残ったのは、渡河をせずに森に向かった1個中隊のみであった。
マッカロン装甲機兵団の気圏戦闘機部隊は、第3大隊からシルティス機兵隊の戦車/歩兵連隊群――尚も自らの降下船群の下で密集していた――に向きを変えた。(この時に)戦車/歩兵連隊群がその降下船群に乗船しなかった理由については定かでない。彼等がシルティス機兵隊のメック部隊を全滅させた待ち伏せ攻撃に気付いていなかった可能性や、彼等の降下船群が損傷していた可能性はあるものである。ともかく、この時点で乗船するのは手遅れとなった。戦闘機群は掃射を繰り返し、10分後、降下船群はその兵装と内部システムの多くを失っていた。FSS“パーカー”、“ハセク”、“ミノス”、“ハーヴァーシャム”、“カロナ”、“デボラ”は、恐らくシルティス機兵隊を見捨てれば自らの命を永らえる事はできたであろうが、彼等の誰もそうはしなかった。
シルティス機兵隊のメック戦士の幾らかは自らの大隊から離脱し、独自の脱出路を探し求めた。第1大隊のベータ中隊は自分達の地点の西方の森林へと向かった。そして、一度そこに辿り着くと彼等は森林に火を放ち、その火炎の中を行軍した。それはシルティス機兵隊にとっても非常に冒険的なものであり、彼等は自分達のメックの熱状態を高くしてしまうという危険を冒したが、この戦術はカペラのメック部隊が彼等を攻撃するのを非常に困難なものへとしたのであった。
第5シルティス機兵隊RCTは、夜を越す事はできなかった。そのメック3個大隊の内、生き残ったのは15機のみであり、それも大部分がカペラ人達の手の中に捕われていた。支援をしていた10個連隊の内、8個連隊が壊滅していた。そして、惑星“サーナ”に歩兵部隊と戦車部隊を輸送した20隻の降下船の内、半数が破壊されていた。
この大敗北のニュースは、尚も惑星“サーナ”から1日離れた所にいたクレーター・コブラとスクリーミング・イーグルスに苦しい選択を迫った。それら3個連隊の指揮官達は惑星“サーナ”が罠である事を知った――しかし、傭兵部隊は自分達が任務の完遂を試みなかった場合、自分達が軽蔑され将来の雇用も危険に晒されるであろう事も理解していたのである。
ここで3個連隊の指揮官達は惑星“サーナ”への任務を継続する事を決断したが、計画には変更を加えた。大佐達は、クレーター・コブラとスクリーミング・イーグルス、その付属連隊群が恒星連邦からの援軍が来るまでの間を持ち堪える事を望むのであれば、自分達は防御態勢を整えるべく敵から離れた1つの降下地域へ1つに纏まって降下すべきである、と決断したのであった。
彼等は、“ビッグ・マック”から200km離れており、兵器工場が近くに存在し起伏に富んだ森林地形に囲まれている、降下地域“ブラックホール”を選択した。それでも、彼等は尚もマッカロンの戦闘機部隊と戦う必要があった。しかし、AFFSの降下船群はカペラの迎撃部隊の混乱を試みて多数の予想外の進路修正を行う事により、自分達の降下地域を隠蔽するのにベストを尽くしたのである。ダヴィオンの艦船群は自分達を迎撃するマッカロンの戦闘機群と出会う事がなかった際に、驚きを感じつつも大いに喜んだ。
5月29日の夜、クレーター・コブラと第2スクリーミング・イーグルスはバックタル近郊に降下した。彼等は素早く市民軍を駆逐し都市に続く幹線道路を確保すると、歩兵/戦車連隊群を搭載している降下船群に降下を開始せよとの信号を送った。
他の部隊群がその地域の偵察の為に扇形に展開している時に、クレーター・コブラの1個大隊は慎重に兵器工場へ向かって進軍した。ここでクレーター・コブラは闇の中、極めて幸運な事に自分達の前方の地面が掘り返されたばかりである事に気付いた。クレーター・コブラの1機は小型の車輌を持ち上げると、それを真新しい地面に放り投げた。そして、これによる地雷の爆発は、工場の防衛者達が砲火を開く合図となった。
ここで、クレーター・コブラの指揮官リチャード・ウェストリック大佐は直感に従った。彼は自分のメック部隊を2つのグループに分け、それらを地雷原の端沿いに2つの異なる方向へ送り出した。彼のこの直感は、グループの片方が森林の端で地雷原が終っているのを発見した際に報われる事なった。彼は素早く大隊群を集結させ、木々の間を通って兵器工場に入っていった。そして、クレーター・コブラは木々の間を急進して工場に入り、内部の市民軍が全てを破壊するのを阻止するのに間に合った。クレーター・コブラは、オートキャノンの弾薬とあらゆる大きさの振動爆弾で一杯になっている倉庫を1つ発見した。
ダヴィオン軍は、マッカロン装甲機兵団の戦闘機群が到着しその複合施設を破壊する直前に、倉庫からその中身を持ち去った。
クレーター・コブラとスクリーミング・イーグルスは自分達の為の時間を幾許か稼げたが、大佐達は自分達の生存がCOCから来る救援次第である事を熟知していた。惑星“サーナ”への侵攻はそれらの傭兵部隊を不安定な立場に置いていた――それは、第5シルティス機兵隊の壊滅だけでなく、コムスターの“通信遮断”も恒星連邦にもたらしていたのである。
この結果として起きたCOC内の混乱の中、COCの上級大将達はクレーター・コブラとスクリーミング・イーグルスが“通信遮断”の直前に送った幾つかの報告を受け取っていた。それらの報告では、3個メック連隊が全ての事態を計画通りに進行しており惑星“サーナ”の支配権を間もなく握るであろう、と述べられていた。そして、これらの報告に基づき、降下船と航宙艦群は“サーナ”星系を離れ、クレーター・コブラとスクリーミング・イーグルスを孤立した状態にしてしまったのであった。この偽のメッセージの発信源がどこであるかは未だに不明であるが、ダヴィオンの諜報部はカペラのマスキロフカかコムスターがその源ではないかと疑っているものである。
(この時)マッカロン装甲機兵団は傭兵部隊の位置を偵察すべく1個大隊を分遣したが、メック部隊の主力は首都近辺に留め置いた。バックタル近郊への着陸が陽動であると信じ込んでいた“ビッグ・マック”は、予期されるAFFSの新たな攻撃から惑星“サーナ”を防衛するべく待機したのである。数ヶ月間に渡り彼等は待機を続け、これによりクレーター・コブラとスクリーミング・イーグルス――COCとの連絡を絶たれ脱出用の艦船も皆無であった――は自分達の終焉を予期しつつ神経質に待機する事となった。そして、8月後期、(漸く)マッカロン装甲機兵団の連隊群はバックタル近郊に到来した。
クレーター・コブラとスクリーミング・イーグルスは、グレーヴズ・ホロウを自分達の決戦地に選んだ。その20kmの全長を持つ森林に覆われた渓谷は、彼等に大量の待ち伏せ地点と防御地点を与えていた。
その最初の大規模戦闘は、9月11日の朝、(クレーター・コブラの)ブラックコブラズとマッカロン装甲機兵団第3連隊の間にて発生した。ここでカペラのメック群は、敵の東側面の特に稠密な森林地域を通り抜ける道の発見を試みた。彼等はその過程にて、第2カパック歩兵連隊の防御地点とぶつかる事となった。これに第2カパック歩兵連隊は攻撃を仕掛けると共に援軍要請をした。
(この時)ブラックコブラズは並行する2つの道路伝いに進軍し、それは程無くしてカペラのメック群の注意を引いた。ここでウェストリック大佐はブラックコブラズに道路から出て森林に入る事を命じ、戦闘を巨大なサーナ松の木々の間の広大な幹線道路の中での危険な“かくれんぼ”遊びへと変えた。そして、この大混戦は、第1クルエーン強襲戦車大隊に戦場へ到着する為の時間を与えたのであった。
そのデモリッシャー戦車とマンティコア戦車の群れの出現は、リンダ・チャンドラセカール大佐に第3マッカロン装甲機兵団の後退命令を出させるのに十分なものであった。第3マッカロン装甲機兵団は、7機のメックを背後に残して離脱した。
その翌月は、“ビッグ・マック”がクレーター・コブラと第2スクリーミング・イーグルスの防御への探査攻撃を継続した為に幾つか同様の戦闘が見られた。ダヴィオン軍はその各攻撃を撃退し、その幾つかに於いてはカペラ人達に高い損害を与えたが、COCからの連絡のない1日が経過する毎にクレーター・コブラとスクリーミング・イーグルスはより神経質になっていった。
この悪状況にも拘わらず、クレーター・コブラとスクリーミング・イーグルスは依然として良好な状態にあり、1/4の損害を受けたのみで最低でもそれと同等の損害をマッカロン装甲機兵団の4個連隊に与えていた。そして、絶望的に見える状況にも拘わらず、その士気も依然として高い状態にあった。
しかしながら、12月初期、マッカロン装甲機兵団は谷の防備の薄い地点を潜り抜け、クレーター・コブラとスクリーミング・イーグルスを包囲した。ダヴィオン軍が自分達の最後の戦いになると考えた戦闘を開始した時、クレーター・コブラとスクリーミング・イーグルスは、その最後のメックの降下に入っている、水平線上から到来するAFFSの降下船群に気付いた。
その降下船群は、ダヴィオン重近衛隊RCTとダヴィオン軽近衛隊RCTを輸送してきていた。“通信遮断”により、彼等は惑星の状況についての情報や何処に降りればいいのかの情報も知らずに惑星“サーナ”へ接近していた。しかしながら、傭兵部隊達からの緊急メッセージは、ダヴィオン近衛隊にクレーター・コブラとスクリーミング・イーグルスの状況がどれだけ差し迫っているかを伝えたのであった。降下を計画するに当たっての通常の予防措置を無視し、これらの2個RCTのメック群は自らの降下船を最も近い軌道にて発進し、一方、通常部隊を搭載した降下船群は大気圏へ降下した。
この拙速の降下はメックの多くを分散させてしまったが、それでも大部分はマッカロン装甲機兵団の連隊群の背後に纏まって降り立った。そして、自分の部隊が突然に包囲され全滅の危機に晒される事となったアーチボルド・マッカロン大佐は、自分の連隊群にクレーター・コブラとスクリーミング・イーグルスの無視と脱出実行を命令した。
ダヴィオン軍が第5シルティス機兵隊の喪失の復讐をすべく戦った為に、マッカロン装甲機兵団は生き残りを賭けた凄まじく苦しい戦いに陥った。ここでマッカロン大佐は脱出を為し遂げたが、1個連隊分の戦力の戦士とメックを失っていた。
その後の数週間に渡り、AFFSは“ビッグ・マック”が自分達の降下船に辿り着いて惑星から離れるまでの間、このエリート傭兵部隊を追撃して惑星“サーナ”中を駆け巡った。