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第4次継承権戦争: メンカリナン戦 |
メンカリナン
スクリーミング・イーグルスの2個連隊は、3029年の到来を祝う理由を余り持ってはいなかった。スクリーミング・イーグルスは技量と大胆さで以て戦いカペラの2つの惑星の征服に重要な役割を果したのであるが、惑星“ニューカントン”のカントン河岸沿いでのその事件により彼等はAFFSの除け者となっていたのである。
惑星“ニューカントン”にて両連隊が次の任務を待っていた際、この傭兵部隊の補給ラインは干上がっていた――これは輸送/補給部内の士官達がスクリーミング・イーグルスを罰する事を決定した為である。スクリーミング・イーグルス総指揮官ホーカラ大佐は、スクリーミング・イーグルスへの連絡士官であるジェニファー・ヴァース少佐に対して激しく苦情を申し立てた。彼は、1人の士官がその感情を制御できなかったのを理由に自分の兵士達が苦難を被る謂われはない、と話した。ヴァース少佐はこの大佐の苦情を認め、スクリーミング・イーグルスの補給状態は改善されるべきであると彼女自ら要請を送ったが、何も起らなかった。補給物資が存在しない一日が経過するごとに、スクリーミング・イーグルスの不機嫌さは増していった。程無くして、コムスターに仲裁を請う事についての会話やAFFSから離脱する事についての会話が交わされるのは、極普通の光景となった。12月中期にスクリーミング・イーグルスの第1連隊が惑星“メンカリナン”への攻撃命令を受け取った時、この会話は命令に従うか、それとも従わないかに関してのものへと変わった。そしてここで、第1連隊の兵士達は、自分達の契約を尊重しない国家の為に戦うのを拒否したのであった。
しかしながら、ここで熱心な交渉を通して、ヴァース少佐はホーカラ大佐と第1連隊の兵士達から、少なくとも遅れている補給物資の幾らかを自分達が受け取ったのならば戦闘はする、という合意を得られた。その後、ヴァース少佐は圧力を掛けたり輸送/補給部内で自分が受けられる全ての恩顧を活用したりして、スクリーミング・イーグルス用の補給物資を解放した。補給物資はその装備を修理するのに間に合うようにスクリーミング・イーグルスの基地に到着し始め、そして、彼等を搭載した降下船群は惑星“メンカリナン”へと向かった。
スクリーミング・イーグルスの戦士達の多くは――特に第1連隊の戦士達は、AFFSに対して大いに含む所があるままであった。(彼等の間には)他の国家へ離反する事についての会話が尚も存在した程である。
惑星“メンカリナン”は、カペラ大連邦国と自由世界同盟の双方によって領有権が主張されていた地であった。しかし、この惑星には、惑星の多数の森林を使用した木製品を除き、市場性の高いリソースが極僅かであったが故に、両陣営はこの惑星を分割する事で満足していた。そして、カペラ大連邦国は惑星の5つの主要な大陸の内の3つを支配していた。
20個戦車/歩兵連隊、1個小隊の老朽メックと戦闘機で構成されるメンカリナン市民軍は、カペラ大連邦国を象徴するものであった。そして、それらは、同数の自由世界同盟連隊と対峙していた。長年に渡り、この2つの陣営の間では散発的な戦闘が行われており、この膠着状態はこれからも続くものであるかの様に見えていた。
カペラ大連邦国と恒星連邦は知り得なかったのであるが、自由世界同盟の最古参部隊である第1自由世界防衛軍の1個大隊が11月に秘密裏に惑星“メンカリナン”の地を踏んでいた。彼等は、リャオ首相の集中力がダヴィオンの侵攻に向けられている間に、カペラ大連邦国の市民軍を圧倒して彼から惑星“メンカリナン”を奪取する事を目論んでいたのである。
キーシャ・バーヴァーラ大隊指揮官(少佐)の指揮下にある重量級メックの1個大隊は、スクリーミング・イーグルスが自分達の南東30kmに降下した時、デナール海峡を渡り惑星“メンカリナン”の首都カロサーシャへ進軍している正に途中であった。バーヴァーラ大隊指揮官はその新たな厄介の種を呪いつつ、自分の大隊を停止させ、惑星“ベレンソン”にいる自分の上官にその新たな状況を報告した。
ホーカラ大佐も同様に、マーリックのエリート・メック部隊が惑星に存在する事に驚いた。大佐は、自分の部隊に対しカロサーシャへ向かうよう用心深く命令した。恒星連邦軍の隊列は幅の狭いリカ河に着いた際に、徐行により遅くなった――そこではマーリックのメック群が屹立して警戒をしていたのである。極めて緊張に満ちた3時間――スクリーミング・イーグルスの最後のメックが最後のマーリックの守備位置を通り過ぎるまでの間、両陣営は互いを近距離で見つめ合った。
スクリーミング・イーグルスはカロサーシャへ向かって進み、そこにて彼等は密な常緑樹の森林の外れでカペラの市民軍と対戦した。ここで欲求不満状態であったスクリーミング・イーグルスは、市民軍部隊に対して何の慈悲も見せなかった。この部隊のメック群と戦闘機群は、容易に戦車とホバークラフト部隊の防衛線を突破し、カペラ人達に撤退を強要した。
この敗走の最中、バーヴァーラ大隊指揮官は命令を受け取っていた。彼女の上官達は彼女に対し、“ダヴィオンという災難の撃退を試みている勇敢なカペラの防衛軍を助けよ”と明瞭に伝えていた。自分が撃滅をする為に送り込まれた軍勢を自分が助けるというのに強い疑いを抱きつつも、バーヴァーラ大隊指揮官はその命令に従った。
かくして、スクリーミング・イーグルスがカロサーシャの中心街へ進入しようした時、連隊の通信機器を護衛しているスクリーミング・イーグルスの保安中隊はマーリックのストーカーの群れが森林を通りスクリーミング・イーグルスの後背に突進してきているのを緊急報告したのであった。ホーカラ大佐は自分の幸運について呪いつつ、自らの大隊の内の2つにカロサーシャを出て新たな脅威に立ち向かう事を命じた。
その第1大隊と第2大隊のメック群は、マーリック軍がスクリーミング・イーグルスの補給物資と通信施設を蹂躙するのを阻止するのに間に合うタイミングで後衛地域に到着する事はできなかった。連隊の保安中隊とギャラックスの1個戦車連隊の奮闘にも拘らず、重量級のマーリックのメック群は容易にスクリーミング・イーグルスの後衛地域全体に破壊を拡大したのである。
また、カペラ軍――その多くは戦闘が終了するまで森林の縁に隠れていた――もこのマーリックの支援に勇気付き、スクリーミング・イーグルスを攻撃した。ホーカラ大佐は、マーリックのメック群と戦うだけでは済まなかった。御し易い敵手であったカペラ人達も突然に悪鬼へと変わったのである。ここでのホーカラ大佐の北方への撤退命令は、包囲を避けられる唯一の方策であったが、この決定は彼の戦士達には不評であった。
カロサーシャを離れる事は、スクリーミング・イーグルスの状況を極めて単純化した。最早、2つの軍勢の間で進退窮まる事がなくなったホーカラ大佐は軍を再編成したのである。そして、同日の日没時に行われた彼の反撃は、その数的優勢を活用したものであり、リャオ軍とマーリック軍の間の協調性の欠如を徹底的に活用したものでもあった。
スクリーミング・イーグルスの第1大隊は、マーリックのメックの大部分が配置されていた敵戦線の左側を攻撃した。第3大隊は、敵戦線の右側に存在するカペラの戦車部隊と歩兵部隊に突撃した。それと同時に、軽量級メックで構成されている第2大隊はマーリックのメック部隊の背後に屈曲する小さな道を使用する事により、彼等を側面攻撃するのを試みた。
スクリーミング・イーグルスの戦闘機群は、敵配置地点に対して反復攻撃を加えた。カペラの歩兵部隊と車輌部隊に対しては、彼等のこの攻撃は全般的に成功を収めた。しかし、戦闘機のパイロット達は、腕の良いマーリックのメックにより頻繁に空から撃ち落される危険に晒された。
スクリーミング・イーグルスの戦闘機群による陽動は、サンダーズ少佐に率いられている第2大隊にマーリックのメック部隊の背後へ密かに入り込む事を可能とさせた。ここでマーリックのメック部隊は第2大隊を重量で遙かに圧倒していたが、それでもスクリーミング・イーグルスは多数の命中弾を与え、多大な混乱を引き起させた。更に、スクリーミング・イーグルスはマーリック軍の通信センターを無力化し、補給物資を燃やす事によって、マーリック軍に報復を果したのであった。
その補給物資が炎上し、自らが敵に包囲される危険に陥った為に、マーリックのメック部隊は後退をした。彼等は、この後退をカペラ人達に伝える事なく行った。このマーリックのメック部隊の不意の離脱は、カペラ軍を強力な支援を欠く状態で置き去りにする事となった。そして、圧倒的な不利に直面した彼等は、程無くして降伏し始めた。
第1自由世界防衛軍の1個大隊はマーリックの駐留部隊と合流し、惑星“メンカリナン”を恒星連邦に残して去った。このマーリックの自由世界防衛軍とスクリーミング・イーグルスの戦闘は、自由世界同盟と恒星連邦が互いに戦い合ったこの数世紀間で最初のものとなった。そして、両陣営の高級士官達は、間もなくこれが珍しい事ではなくなるであろうと予想したのであった。