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第4次継承権戦争: マルフィク戦


マルフィク
 “マルフィク”は、第11ヴェガ軍団指揮官でありタカシ・クリタ大統領の後継者であるセオドア・クリタを捕える機会をLCAFに提示していた。タカシの息子を捕えるか殺害するのは、ドラコ連合を政治的な狂乱状態にすると思われた。そして、LCAFはセオドア・クリタを捕えるべく極めて単純な計画を立案したが、1つの過ちを犯していた――その計画は、セオドア・クリタの指導者としての能力を過小評価していたのである。第11ヴェガ軍団とその他のヴェガ軍団はDCMS内の不平分子や不適応者達の掃溜めであり、セオドアは懲罰として彼等の指揮官に任じられていた。しかしながら、第11ヴェガ軍団の戦士達は不平分子であったが熟練の闘士でもあり、セオドア・クリタも才能のある指揮官であったのである。
 LCAFは、惑星の主要な大陸であるノース・ギャルフリーを防衛する為に散在している第11ヴェガ軍団の多彩な塗装をしている悪夢の様なメック群とその他の12個連隊から、“マルフィク”を征服し目的のものを獲得するべく、エリートの第4スカイア特戦隊と25個歩兵/戦車連隊を割り当てた。
 特戦隊はヴェガ軍団の戦闘機部隊が宇宙航行には耐えられなかったが故に、抵抗を受ける事なく惑星に接近して降下した。しかし、ライラ共和国にとっての困難はそれから程無く始まったのであった。スカイア特戦隊のレストレード一族――国家主席の最大の政敵――との関係により、このメック部隊はLCAF内の“ダヴィオン的変革”へ常に憤っていた。そして、その事は、特戦隊が戦闘計画に従わず、歩兵部隊と装甲部隊を放置した際に明るみに出たのである。
 クリタ大佐とそのメック部隊は、マシンガムと呼称されている小さな鉱山町にて特戦隊と遭遇した。特戦隊が多数の支援部隊を同伴させると予想していた彼は、自分の軍を長大な散兵線に配置していた。彼は敵に打撃を与え、その後に背後の森林に姿を隠すのを望んでいたのである。しかし、クリタ大佐がライラ共和国のメック部隊が単独でいるのを察知した時、彼は自らの計画を変更した。彼のメック部隊による牽制攻撃は、その歩兵部隊と装甲部隊が森林に後退するまでの間、特戦隊を足留めした。それから、メック部隊による最後の一斉射撃をした後、ヴェガ軍団は向きを変えて戦場から逃走したのであった。
 特戦隊は得意気にライラ共和国の他の連隊達に対して、自分達がヴェガ軍団を敗走させ、間もなくクリタ大佐を捕えそうである、と無電で送った。そして、極度に自信過剰となった彼等は森林に進入し、直ちに迷ってしまったのであった――クリタ大佐が望んだ通りに。それから2時間に渡り、彼等は道を探してあちこちを彷徨する事となった。
 彼等がようやく抜け出した丁度その時、彼等は60km西の小都市ゲザーズ・ジュエルの攻略を試みていた2個連隊からのレポートを受け取った。それらの連隊の大佐の1人は、その特戦隊に対する当て擦りに満ちたレポートの中で、意気阻喪していると推定されていたドラコ連合のメック部隊がその彼女の連隊の戦車部隊の周囲を走り回り・撃ち・踏み潰すという素晴らしい時間を過ごしている、と語っていた。
 面目を失った特戦隊は、気圏戦闘機を大いに活用してヴェガ軍団を追跡し続ける、という行動が含まれている元々の戦闘計画に立ち戻った。これは非常に成功を収めるものである事が証明され、ライラ共和国軍は程無く東方に逃れたヴェガ軍団とそれが同伴している連隊群を彼等の降下船から引き離したのであった。
 ライラ共和国の数的優勢と打撃戦への愛好により、戦闘は短時間かつドラコ連合軍に重い損害を与えるものとなった。この損害にも拘わらず、クリタ大佐は多大な打撃を与えて、再び戦闘をするべく脱出を行った際にその卓越した手腕を見せ付けた。彼は優秀な戦術能力を示しただけでなく、その兵達に対するカリスマも示したのである。傍受した通信は、DCMSの一般に独裁的である士官とは懸け離れている、軍の慣例を捨てた1人の士官、歩兵連隊や戦車連隊出身の士官達の意見を進んで聞く1人の士官、自らの兵士達を心から案じている様に見える1人の士官、等々の様子を描き出していた。
 しかし、戦場での優れた才能は、数と火力の上での優越性をある程度までしか相殺できないものなのである。その最高の奮闘にも拘わらず、クリタ大佐は自分のメック連隊が1個中隊の稼働状態のメックと1個中隊の損傷したメック――その大部分は戦闘不能――にまで打ち減らされるのを止める事はできなかった。希望がほぼないのを悟ったクリタ大佐は、小さな沿岸都市シティカ郊外の静かな緑の丘陵を名誉ある最期を迎える為の地として選択した。
 薄暮頃、ライラ共和国の偵察戦車部隊の最初の一隊が出現し始めた時、クリタ大佐は驚くべきニュースを受け取った。1ヶ月前、シティカの空港に1隻のユニオン級降下船が墜落していた。そして、それは修理が終っているのであるが、侵攻の混乱の中で忘れ去られていた、というものであった。“マルフィク”星系内にドラコ連合の航宙艦が存在していないが故に疑わしいものであったが、クリタ大佐は自分の幕僚達の嘆願に負け、脱出を決行する事に同意した。しかし、生き延びる為には、彼はシティカに入り、降下船に搭乗するまでの間、ライラ共和国を足留めしなければならず、敵がそれに気付く前に脱出をしなければならなかった。
 翌朝、その戦闘は開始された。特戦隊にとって、クリタ大佐がその1個中隊のメックを予備に保持し、それを用いる適切な時を待っている様に見えた。そして、ライラ共和国の1個戦車連隊が戦線を突破してシティカに向かって突進した際に、彼等が使用される時は来た。ヴェガ軍団のメック達は特戦隊が予想した通りに反応し、それらは戦車部隊の戦線後方を押し分けて進んだのであった。
 突撃中の特戦隊は、ドラコ連合のメック群がその兵器の極少数しか使用をせず、それらのメックの腕の幾つかが死んでいるかの如く揺れ動いている様に見える事に気付かなかった。そして、スカイア特戦隊がパンチのできる距離まで接近し、その内の1機がヴェガ軍団のメックの腕を掴もうと手を伸ばした時、それは金属板の偽物を引っ張り出す事となった――特戦隊が騙されてしまっていた事をこれは示していた。
 惑星“マルフィク”の遥か上空では、ライラ共和国のマーキングが応急的に施された1隻のユニオン級降下船がナディール・ジャンプポイントに向かっていた。そこには、1隻のライラのスカウト級航宙艦――前線から発せられたり前線へ送られたりする報告や命令を運ぶ為に使用されていた“ポニーエクスプレス”の内の1隻――が待機していた。星々から自分達が受け取りつつあるニュースにご機嫌であったその航宙艦の乗員達は、接近中の降下船がその所属と目的を明らかにするのに失敗した時も疑いを抱かなかった。彼等は、士官の1人がライラ共和国に帰還する為に便乗しているに違いない、と決め込んだのである。
 クリタ大佐の個人的な護衛達は、然程の困難も経験する事なく船の乗員達を取り押さえた。そして、その護衛達は少しの努力で以て、自分達を“ヴェガ”に連れて行くのを乗員達に強制したのであった。


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