VS

第4次継承権戦争: マンデート戦


マンデート
 第6南十字星部隊が、惑星“マンデート”――カペラ大連邦国内の他のどの惑星よりもエリートである武家に若き男女を多く供給している惑星――に侵攻した。COC(カペラ作戦軍)は、この惑星の住民達――惑星の過酷な環境とリャオ社会の厳格さによって狂犬となっていた――が武家にいる彼等の娘と息子達と同じ位に獰猛なのではないか、と懸念していた。
 そして、惑星“マンデート”の一般市民達はこれらの予想通りの行動をしたのであった。空に於いては、プロペラ航空機が降下中のメックと降下船群に対する体当たりを試みた。地上に於いては、背中に爆発物を括り付けた男女達がメックの真下に走り込んでその爆発物を爆発させる事を試みた。
 マンデート市民軍と義勇連隊も同様の戦術を行使しただけでなく、その規模はより大きくなっていた。南十字星部隊は惑星の首都グローリー・オブ・リャオに素早く行軍したが、彼等は狙撃兵・水源の汚染・市民軍による大規模突撃に直面する事となった。これらの攻撃の大部分は軍事的効果を持たないものであったが、老いた男女達、更には子供達でさえも殺す必要性があった事は南十字星部隊の決意を摩耗させるものであった。南十字星部隊がグローリー・オブ・リャオの堡塁に到達した時には、彼等は感情面に於いて疲弊しきっていた。
 中量級メックの1個中隊、軽装甲部隊の1つ、レーザー擲弾兵の1個大隊、(輸送ヘリコプターとガンシップ・ヘリコプターを有するジャンプ歩兵部隊である)1個空挺大隊が、グローリー・オブ・リャオへ最初に到達した最初の部隊である。これらの南十字星部隊が森林地区から出てきた時に、カペラの戦車の3個中隊、市民軍歩兵の2個大隊、民間人の義勇兵の1個連隊が、突然に隠れ場所から出現した。南十字星部隊大尉ジョーナ・フローレンティーンは、カペラ人達が自らのカモフラージュ・ネットをかなぐり捨てて彼等の前に立った時の事を覚えている。「それはまるで、さっきまで固い地面であったものが、次の瞬間には小刻みに揺れて捩れ、地面から出できた地虫が金切り声を上げるかの様な光景だった」と。
 カペラ人達の戦術は程無くして明らかになった。実体弾ライフルや鋭くした農具を振り回す民間人の義勇兵達は、ダヴィオン軍に向かって殺到した。そして、彼等の中に混ざっているのは市民軍の戦車部隊と歩兵部隊であり、それらはその喚き叫ぶ一般市民達を盾として使用していたのである。南十字星部隊は市民軍には命中弾を与え民間人には弾を外す事を試みたが、それはリャオ軍により多くの時間を与える事となった。
 途方もない損害を被ったものの、その第3波攻撃はダヴィオン歩兵部隊の戦線を崩壊させた。このカペラ人達に撤退を強要するには、2機のファイアスターターの出現とその火炎放射器を必要とした。そして、AFFSは、3個小隊の歩兵部隊、1輌の軽戦車、1機のファイアスターターを失っていた。
 カペラ人達が再結集して更なる攻撃を行うまでの間、ダヴィオン軍は一息入れるのに僅かな時間しか持てなかった。マンデート義勇連隊の生き残り達は、カペラの装甲部隊と歩兵部隊にぴったりと追随されつつ、ダヴィオンの位置に向かって突撃した。ダヴィオンの歩兵部隊からの弾丸やレーザーと残存するファイアスターターからの火炎放射器によって恐るべき損害を被ったにも拘らず、彼等は突撃を続けた。
 しかし、カペラ人達の人波がダヴィオン兵達に接近した正にその時、ヘリコプター群が戦場の上空を暗くした。数瞬後、ダヴィオン第3マッケンリー降下連隊はマンデート義勇連隊の只中に着地していた。その生き残った者達は集合して互いに背中合わせにしつつ、カペラ人達を射撃した。
 これに、マンデートの市民達は動揺した後に潰走した。この事はカペラの戦車部隊と歩兵部隊を剥き出しにした――彼等は即座にダヴィオンの戦列に向かって砲火を開いた。ヘリコプター・ガンシップの内の数機は掃射で以てカペラ人達の前進を鈍らせたものの、それらの戦車群は接近を続けた。ファイアスターターに搭乗した戦士は戦車群に突撃し、カペラのマンティコア戦車により自機の右脚が破壊されるまでの間に1輌を破壊し、もう1輌を火達磨にした。
 敵の戦車群はダヴィオン軍に殆ど到達していた――しかし、その時に彼等は1輌また1輌と白光と煙に包まれた。南十字星部隊のメック2個中隊が遂に到着したのである。カペラの戦車群はメック部隊に対して勝ち目は殆どなかったのであるが、彼等は最後まで激しく戦い続けた。
 静寂が戻った時、茫然とした状態の南十字星部隊は彼等の事を見回した。戦車やメックが通った所を除く至る所に死体が積み重なっていた。血が広大な赤い水溜まりを作っており、それは燃え盛る車輌の炎を静かに映し出していた。
 その生命の損失は余りにも酷くかつ無意味なものであり、結果、惑星“マンデート”の一般市民達は首都を巡って更なる血の池を作り上げる事よりも降伏する事を選んだ。


BACK