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第4次継承権戦争: アルタイル戦


アルタイル
 “アルタイル”は乾燥した惑星であり、水は地下深くの川と極少数の小さな湖しか存在していなかった。突き刺す様な太陽が届く遙か地下の川の通り道に沿って、小規模の草木が生えた地表が存在していた。惑星“アルタイル”と同じ様に干上がっている惑星は数千人以上の人口を抱えている事がなかったが、惑星“アルタイル”の乏しい水と草木の周りには20億人の人々が密集していた――この惑星の莫大な鉱物資源と金属資源がその理由であった。この富は、ドラコ連合にエリートの第18ディーロン連隊と多数の支援部隊を惑星“アルタイル”に駐留させる様にしていた。
 スフィア上級大将はこの惑星“アルタイル”が“ホルドル作戦”に於ける素晴らしい目標であると見なしており、彼は傭兵部隊オールウェイズ・フェイスフル、エリートの第17スカイア特戦隊、それらのRCTを惑星“アルタイル”の奪取に投入した。だが、スカイア特戦隊がレストレード公爵の親衛隊であるが故に、これは問題の多い編成であった。レストレード公爵は自分の部隊が予備部隊の一部に指定されており、従って戦闘には関与しないと抗弁したのである。しかし、カトリーナ・シュタイナー国家主席はレストレード公爵のそれらの激しい抗議を退け、また、スカイア特戦隊の戦士達は約2年間待機した後にようやく戦争で自分達が戦える機会が巡ってきた事を歓迎したのであった。
 6月2日の夜にライラの連隊群は惑星“アルタイル”に降下し、最初にスマート・アリス・スプリングスとベイスン・フラット――ヘヒロー・シティーとディーロン連隊に続く道の途中に存在する小さな湖の側に位置する2つの小さな町――の確保を試みた。
 2つのメック連隊は困難を覚える事なく町を攻略し、そして、即座にライラ共和国の降下船群は兵士・車輌・補給物資を降ろした。ここでディーロン連隊の戦闘機群と極少数の不屈の狙撃兵はライラ人達を間断なく攻撃して悩ませたが、それは少数の損害を被らせるのみに留まった。この作戦行動の初期段階に於ける容易さは、ライラ共和国の兵士達の士気を高め、彼等は自分達が惑星“アルタイル”を何時頃に奪取できるか賭けを始めた。
 しかしながら、信じられない程に乾燥した土地を通ってのヘヒロー・シティーへの進軍は、その自信を枯渇させていった。冷却液の運搬用に改修されたタンク・トラックや空中投下があったにも拘わらず、ライラ共和国軍はディーロン連隊よりも耐えられない暑さの方に懸念を深めていったのである。また、吹き付ける砂は全てのヴィークルの中の作動部分に入っていた為に、移動を整備士と機関士達にとっての悪夢へと変えた。
 一方、ディーロン連隊は特別の冷却液・遮蔽・特別のエアジェット等々を使用してヴィークルを砂から防護し続ける事により、この過酷な環境に順応していた。ローカスト、カタパルト、オスト・ファミリーのメック――その全機が砂丘の背後に屈んで隠れる事ができた――を使用したドラコ連合のメック小隊群は、通過するライラ共和国の部隊を待ち構え、その後に立ち上がっては補給物資を積んだトラック等の脆弱な目標を攻撃した。
 2個RCTがヘヒロー・シティーに接近した時、ディーロン連隊は包囲の阻止を試みつつも、未だに小規模の町ダンフォード――高価な金属と鉱物の貯蔵庫と貴重な記録の貯蔵庫を持っていた――を保持したままでいた。ここでドラコ連合軍はその両方の賭けに失敗し、それにより最終的にはダンフォードを失いヘヒロー・シティーに撤退した。
 スカイア特戦隊とオールウェイズ・フェイスフルは、9月後期に都市の外縁に到達した。そして、そこでの戦闘はLCAFに有利になり、ライラ共和国軍は長い攻囲に着手した。シュタイナーの部隊は、野営地と慰安所を設営して自軍に供した。また、戦闘工兵達は飛行場を建設し、砂丘をその端で食い止める為に2輌の大型ホバークラフトを砂除去車に改造した。
 11月8日、ディーロン連隊は侵攻軍の奇襲を試みた。北を攻撃したディーロン連隊の第2大隊は、スカイア特戦隊とオールウェイズ・フェイスフルの間の境界線に存在する村の強行突破を試みた。もし、そこにドラコ連合軍に立ち向かったオールウェイズ・フェイスフルの1個小隊が存在していなかったのならば、第2大隊はライラ共和国軍の位置の後方に回り込めたであろう。オールウェイズ・フェイスフルのその4機のメックはディーロン連隊を遅滞させ、自身が撃破される前にライラ共和国の他の部隊に警報を発したのであった。
 この結果として生じた戦闘は余りにも多くの注意を引き付け過ぎるものであり、ディーロン連隊の他の2個大隊はライラ軍の包囲環を突破して、2個戦車中隊を蹂躙し、砂漠へと入った。LCAFは第2大隊を壊滅させ終えると、2個大隊の後を追った。
 続いての2ヶ月に渡り、スカイア特戦隊とオールウェイズ・フェイスフルはディーロン連隊の残余の追跡を行った。ここでライラ軍は、ドラコ連合の戦士達が熱・砂・水の不足に煩わされない様子で砂漠を移動している事に驚嘆した。ライラ共和国の気圏戦闘機部隊により漸く、彼等は触接を続けられたのであった。小規模のドラコ連合部隊はしばしば追跡するライラ共和国軍部隊に向き直っては攻撃し、反撃で損害を余り被る事なくそれらに対して損害と破壊を撒き散らした。
 LCAFは、惑星“アルタイル”での作戦行動の愚かしさを最終的には認めた。ライラ共和国の連隊群は、自分達が良く適応できない戦争行動に衰弱し始めていた。また、彼等には当初の目的の1つであった第18ディーロン連隊の撃滅の見込みも殆どなかった。ライラ共和国は自らの軍部隊を壊滅から守るべく、第17スカイア特戦隊とオールウェイズ・フェイスフルを撤退させた。
 このエリートである第17スカイア特戦隊の初期の失敗は、レストレード公爵の面目を潰した。(この時)彼はニュースレポーター達に連隊と共に移動する為の代金を支払っており、それ故に彼は自分の私設軍に関する良いニュースを全ての者達に深く認識させる事ができていた。そして後に、敵の技量に対するレポートが増えるばかりのニュースが返って来た時に、公爵は自らの怒りを隠す事ができなかったのである。しかし、彼はそれから間もなくして暗殺者に毒を盛られて倒れた為に、それ程長くは怒りに煮え繰り返る事はできなかったのであった。


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