自由世界同盟主要惑星
マーリック共和国主要惑星
惑星名: アトレウス (Atreus)
恒星型: F4V
軌道番号: 3
ジャンプ・ポイント行程日数: 16日
リチャージ・ステーション: ゼニス、ナディール
政治形態: 代議共和制
領有貴族: ヤノス・マーリック公爵
コムスター施設: A級
コムスター代表者: ペドレゴル・アリズ最高大使、アトレウス基地司教
人口: 5,391,000,000
原生生命%、進化レベル: 10%、哺乳類
“アトレウス”は“エクソダス”の期間中に最初に入植がされ、当時はそれは最も遠いリムワード方面の居住惑星であった。2271年、“マーリック条約”は“アトレウス”を自由世界同盟の首都と制定した。(条約の)代表者達が“アトレウス”を選んだのは、その首都であるアトレウス・シティーに計画がなかったのが理由である――その無秩序に広がった丘陵斜面の地域は、“オリエント”や“マーリック”、“レグルス”の飾り気のない都市よりも政府を置くのに好ましい環境に見えたのであった。それ以降の全世紀間に渡り、保安上の予防措置は“議会議事堂”をその近隣から隔離しており、この都市の魅力は決して損なわれてはいない。
“議会議事堂”は、都市の北端に位置している。これは、壮大な彫刻のされた庇、クロミウムと大理石模様のフェロクリートでハイライトされた建物正面を持った23世紀のポスト・テランアーキテクチャーの素晴らしい実例である。また、これは5つの継承国家の中で未だに存続している唯一のオリジナルそのままの議事堂である(恒星連邦、ドラコ連合、カペラ大連邦国の首都は移転しており、ライラ共和国の議事堂は地震によって破壊されている) これらの事全てはアトレウス・シティーに古雅な雰囲気を与えており、それは惑星と都市の双方の活気のある経済を覆い隠してもいる。
この都市の主な産業は、式典である。その人口の40%という驚異的な数の人々が帝国的式典に関連するサービス業――国事の晩餐会での料理提供、自動車行列用車輌の給油と維持修理、公式レセプション用の幔幕とその他の装飾の提供、政府ビルディングの耐衝撃性ダイヤモンドグラス製窓の窓拭き、等々――に雇用されているのである。この都市の他の20%の人口は、政府の補助的な分野――政府の巨大なコンピューター複合施設向けに部品や修理を提供する等々の分野――で働いている。この惑星の他の分野は、最高技術水準の漁業やセミダムにある航空宇宙製造施設を除いて殆ど未発展である。マーリック政府の主要な弱点の1つは、惑星外の製品とサービスに余りにも依存し過ぎている事である。ほぼ途切れる事なく続く戦争の2世紀間で、“アトレウス”が侵攻された事は一度もない。しかし、“アトレウス”の一般市民達は、侵攻よりも封鎖の方を恐れているのであった。
惑星名: エンジェルII (Angell II)
恒星型: G5V
軌道番号: 2
ジャンプ・ポイント行程日数: 7.5日
リチャージ・ステーション: ナディール
政治形態: 代議共和制
政治指導者: カーチャ・ドミニク主席
コムスター施設: B級
コムスター代表者: メリッサ・シュバルツ司教
人口: 1,145,000,000
原生生命%、進化レベル: 20%、哺乳類
23世紀初期にマーリック共和国の探検家達によって最初に地図に記されたこの“エンジェルU”は、“グレート・エクソダス”の最中に植民された。この惑星の表面積の90%以上を占める海は、化学物質のシトリウム(人体の代謝を危険なレベルにまで低下させる天然の鎮静剤)によって汚染されており、“エンジェルU”での生活は常にアイスシップと水浄化技術に大きく依存している。それにも拘わらず、この惑星は豊富な鉱物資源(特にラジウムとセシウム)を持っており、数世紀間に渡りマーリック共和国内に於ける最大の富の源泉であり続けている。
“エンジェルU”の社会構造は、水浄化技術へのアクセス権を持っている極少数の強者達の階層と単純労働者達の階層に分かれている。単純労働者達は、その雇用主から真水の無味乾燥な糧食を受け取るか、生食材と信頼性の低い“現地の調理器具”に頼るかをしている。継承権戦争の略奪行為はこの隔たりを更に広げており、単純労働者達の不穏は一度ならず暴動を激発させている。3019年のこの惑星に対する最も新しいシュタイナーの襲撃の最中、多数の単純労働者達のパルチザンがライラに協力して戦った、との噂が存在している。しかしながら、一連の逮捕と裁判もそれを確証する証拠を全く示してはいないものである。
アンドゥリエン公国主要惑星
惑星名: アンドゥリエン (Andurien)
恒星型: G0V
軌道番号: 5
ジャンプ・ポイント行程日数: 10.5日
リチャージ・ステーション: ゼニス
政治形態: 世襲寡頭制
領有貴族: デイム・キャサリン・ハンフリーズ、アンドゥリエン女公爵
コムスター施設: A級
コムスター代表者: フランコ・バンドー司教
人口: 4,950,000,000
原生生命%、進化レベル: 20%、両生類
“アンドゥリエン”の運命は、皮肉と対比に満ちている。“戦争の時代”には、それはマーリック家とリャオ家の闘争の尽きる事のない源泉であったが、継承権戦争の暴力に対しては事実上無傷のままであり続けている。ここ50年間に渡り、その軍部隊は時々しか戦闘を経験していないが、マーリックの“英雄の殿堂”よりも多くの名誉と勲章を身に着けている。そして、その指導者達は自由世界同盟創設を助けた者達の末裔なのであるが、彼等は自由世界同盟を引き裂く事に没頭している様に見えるのである。
常軌を逸した行動がハンフリーズ一族には何回かあったにも拘わらず、かの支配一族の首位権に深刻な疑問が抱かれた事は一度もない。今日でさえも、その首都ジョジョケンの政治的環境は、首都の北方に広がっている高名な植物園と同じ様に落ち着いている様に見えるのである。しかしながら、デイム・キャサリンが(カノープス統一政体のカイアラ・セントレラの助けで以て)自由世界同盟から離脱するという自らの計画を実行に移した場合、“アンドゥリエン”の一般市民の忠誠は今までで最大の試練を迎える事になると思われる。
ギブソン公国主要惑星
惑星名: ギブソン (Gibson)
恒星型: G2V
軌道番号: 3
ジャンプ・ポイント行程日数: 9日
リチャージ・ステーション: ゼニス
政治形態: 直接民主制
政治指導者: ジョナサン・アルゴウリス公爵(プリンシパル)
コムスター施設: A級
コムスター代表者: ミルドレッド・アパーノ司教
人口: 4,137,000,000
原生生命%、進化レベル: 10%、哺乳類
政治的に言えば、“ギブソン”は政治が奇妙な縁を持たせるという最良の実例である。レグルス公国からの独立を宣言したこの惑星は、“モロカイ”、“クリッパートン”と結束してギブソン公国を創設した。この乾燥した文化的に多様である惑星は、レグルス人を自分達を圧制する者であると考えたのである。そして、3世紀と四半世紀の間独立していても彼等は未だにレグルスへの警戒をしているが、ここ最近は自由世界同盟“議会”にてレグルス側に与しているのであった。
多数の人種や宗教グループから構成されている“ギブソン”の人民達は、自分達の“地球”の伝統と習慣に頑固に執着している。その首都のポーテントに於いては、ダシーキを着た男性がダーンドゥル・ドレスを着た女性と歩いている光景は珍しくない。また、多数存在している商店街地区の1つの250m圏内で3〜4つの言語が話されているのを聞いた事がないという者がいるのはあり得ないものである。その最大の単一の宗教グループは仏教徒であるが、それ以外の主要な宗教(それと、それのマイナーな宗派)の信者も多数が存在している。首都近隣の地区はアラブ人と日本人によってほぼ等分されており、また、その近隣にある小さな街はケチュア語が第2公用語となっている。
地理的に言えば、“ギブソン”はかつて80%が陸地であったが、その地表の外形はこの惑星をテラフォーミングに理想的なものにしていた。水の輸入によって最初の雨が惑星の各所に降った時に、湖、河川は自然に発生したのである。
モシロ列国主要惑星
惑星名: モシロ (Mosiro)
恒星型: K0V
軌道番号: 3
ジャンプ・ポイント行程日数: 5日
リチャージ・ステーション: ナディール
政治形態: 寡頭制
領有貴族: アリ・ジャフィク公爵
コムスター施設: B級
コムスター代表者: サンドラ・オリフ司教
人口: 3,399,000,000
原生生命%、進化レベル: 25%、植物
“モシロ”は、モシロ列国――この国には他に“エル・ギーザ”と“ヒューディーバが”が所属している――の中央に位置している。主にアラビアとイスラムが起源である“モシロ”の人民達は、“議会”にてマーリックとマーリックの世界主義に反対する傾向がある。その惑星政府は宗教的な意見の相違や社会的な多様性に対して自由世界同盟の他と同様の寛容さを公式には保持しているが、現地にはそれとの幾つかの齟齬が存在している。例えば、その全ての人民とここへの訪問者達は、(イスラム教の)勤行時報係の祈りの呼び掛けに対して応える事を期待される。これには法による義務はないが、如何なる非ムスリムも政府官僚に対して毎日の祈りの免除を申し込む必要がある。また、ムスリム達には雇用に於ける優先権が与えられており、一方、“不信心者”達は遥かに低い頻度でしか昇進の機会が与えられないのであった。
しかしながら、“モシロ”は偏狭な場所ではない。かような指導は、古代“地球”のヨーロッパの暗黒時代――ムスリム文明が絶頂であった時に立ち返ったものなのである。ムスリム建築は“モシロ”の平地から威風堂々とそびえ立っており、その人民達は詩歌・芸術・科学に於ける自分達の業績を誇りに思っている。“モシロ”の第2都市のアルハッサムは、“地球”外で最も先進的な天体物理学研究所を収めている。そして、首都のアルイブンは政府文書館、図書館、美術館、自然史博物館、公園、吊り庭、滝、自由世界同盟で最大のモスクが入っている複合施設を誇っており、それら全てを合わせると古代“地球”のスペインのアルハンブラ宮殿に匹敵するものである。
この啓発された文化環境に於ける、ここ数十年間の唯一の神学上の闘争は2990年代に起きたものである――その時、ある集団が“ラスタファリ思想”と呼称される“地球”の宗教を“モシロ”で復活させる事を試みたのであった。このラスタファリ思想の信奉者達の“バビロン”の黙示録的な(自分達以外を除いての)破壊という至福千年説の信仰と、その聖餐としてのマリファナの喫煙は、彼等に大規模な迫害をもたらした。新たな千年紀の到来以降、彼等は大きく数を減らしており、恐らく次の千年紀が来るまでは地下に潜り続けるものと思われる。
オリエント公国主要惑星
惑星名: オリエント (Oriente)
恒星型: F2III
軌道番号: 4
ジャンプ・ポイント行程日数: 191日
リチャージ・ステーション: ゼニス、ナディール
政治形態: 代議共和制
領有貴族: クリストファー・ハラス大公
コムスター施設: A級
コムスター代表者: アレクサンドラ・オベロン司教
人口: 3,972,000,000
原生生命%、進化レベル: 20%、哺乳類
“オリエント”は、自由世界同盟で最高の世界主義者である。“エクソダス”時代の初期、アリソン家は科学・芸術・産業・商業上の進歩的なアイディアを奨励した。そして、自由世界同盟で最も高度な教育を受けている住民を持つ事により生まれたその洗練さの度合いは、継承権戦争の猛威でも破壊できなかったものである。しかしそうであったとしても、技術の喪失と産業の破壊をこれ程までに深く経験している惑星は他に存在していないのであった。その生活の標準が戦争開始以降は半分より下のものになっている事を、複数の推定が指し示しているのである。ハラス家は“オリエント”が正に必要としていたであろう相当な軍事的才能を持っており、それでリャオ家の攻撃に対する脆弱性を補っている。しかしながら、ハラス家は、アリソン家が“オリエント”を中心領域で最高に魅力ある惑星の1つにするのに使用した想像力や進歩性を示す事は殆どないのであった。
その平均気温が“地球”よりも僅かに高い為に、“オリエント”はうねる草原・パノラマ的山脈・熱帯雨林を持つ瑞々しい緑の惑星となっている。頻繁なリャオの襲撃は“オリエント”の製造施設群に損害を与えているが、その環境には手を付けずにいる。
保護領主要惑星
惑星名: ノヴァ・ローマ (Nova Roma)
恒星型: F6IV
軌道番号: 3
ジャンプ・ポイント行程日数: 14日
リチャージ・ステーション: ゼニス、ナディール
政治形態: 軍事独裁制
政治指導者: スタントン・デ・ビーアス大佐
コムスター施設: B級
コムスター代表者: アレックス・デュマロフ司教
人口: 2,662,000,000
原生生命%、進化レベル: 20%、爬虫類
「戦術や戦略ではなく、運命こそが、大抵は大戦闘の場所を決定する。ワーテルロー、ゲティスバーグ、ニューヴァンデンバーグ、ケンタレス――重大な軍事的瞬間の全ては殆どの者達が予想もしなかった時と場所にしばしばやって来るものである……そして、その後に恐ろしい遺産を置いていく」――この文は“ケンタレスの大虐殺”について2798年にダヴィオン家の歴史家によって書かれたものであり、それは“ノヴァ・ローマ”にも当て嵌まるものである。星間連盟の良き日々の最中、インドルス・コーポレーション社によって植民されたこの惑星は中程度の成功を収め、(その後は)4世紀間に渡り些か活気のない農業世界のままでいた。その戦略的重要性の欠如の為に、この惑星は継承権戦争に於ける敵部隊の攻撃からも逃れられていた。しかしながら、3014年、“ノヴァ・ローマ”のこの幸運は最終的には尽きたのであった。
その年の9月、ウルフ竜機兵団の部隊が着陸し、ここに駐留していた自由世界防衛軍の守備隊を容易に制圧した。その夏の後期、アントン公はこの惑星の“行政評議会”の微笑みを浮かべたメンバー達(彼等は武力で以てその場に掻き集められていた)に囲まれる中、“ノヴァ・ローマ”から煽動的な演説を発した。そして、この出来事のヴィッドテープは忠誠派のマーリック部隊に放送され、彼等の怒りを掻き立てた。従って、アントンの部隊が自らの最後の決戦の為に“ノヴァ・ローマ”にて再編をした時、ヤノスの先遣軍はそれらの敵を追撃する最中に多くの工場を破壊して地雷を撒いていったのである。
この損害は“ノヴァ・ローマ”の経済を衰退させており、それは外部の援助なしに回復する事はないと思われる。しかしながら、この危機は惑星の統治者であるスタントン・デ・ビーアスには顧みられておらず、彼は全ての反乱の噂を勤勉に確かめていく事に自分の時間を費やしている。そして、それに対して、この惑星の“行政評議会”は、同様の武力を持ったその新顔(スタントン・デ・ビーアス)へ微笑みを向ける以外の力は持っていないのであった。
レグルス公国主要惑星
惑星名: レグルス (Regulus)
恒星型: K6III
軌道番号: 4
ジャンプ・ポイント行程日数: 4日
リチャージ・ステーション: ゼニス、ナディール
政治形態: 文民独裁制
領有貴族: デリック・キャメロン=ジョーンズ伯爵
コムスター施設: A級
コムスター代表者: アルド・マラービ司教
人口: 3,139,000,000
原生生命%、進化レベル: 10%、爬虫類
キャメロン一族が公国君主の地位を得て以降、“レグルス”はここ数十年間で相当な変化を経験している。その初期の歴史――マハラジャの如くセラヤ一族が統治をしていた時代――を特徴付けていたヒンドゥー教の影響は、セラヤ一族が自由世界同盟を逃げ出した2550年代以降は次第に消えていっている。
近年、“レグルス”の政治上の展開は極めて二心のあるものである。数世紀間に渡り、“レグルス”の“議会”議員達は自由世界同盟“議会”に於ける野党を指導する声でいる。自由世界同盟からの離脱の気運は高まっているが、デリック・キャメロン=ジョーンズは最近のマーリックの重商主義指針よりもカペラの干渉の方を恐れている。移り気なアンドゥリエン女公デイム・キャサリン・ハンフリーズはキャメロン=ジョーンズに対して離脱、無血革命、第6の継承国家の創設という題目について知らせているが、それらの構想がどの程度まで進められているのかは推測の域を出ないものである。コムスターは、キャメロン=ジョーンズがかの女公を自分独自の目的――政治的というよりも経済的なもの――の為の隠れ蓑として利用していると確信している。しかし、その伝統にも拘わらず、もし、マーリックとかの女公の激突が実現した場合に彼がどちらの側に立つかどうかは推測不可能である。
“レグルス”はまた、自由世界同盟で最も人気のあるエンターテイナーのジャック“アイスピック”メルトン――同じ番組に2回出る事は決してない多数の才能を持った男性――の故郷でもある。俳優、コメディアン、ミュージシャン、パフォーマンス・アーティスト、マジシャンである彼は、水中で歌うというイリュージョンを見せたり、僅かな手振りで大きな楽器を出したり消したり、ホロテープ生収録のコメディの最中に観衆を空中浮揚させたりしている。彼は、そのパフォーマンスの全てに於いて社会的な価値観を要求するものには1分でさえも使わない事に誇りを抱いている。“デルクール”と“クレイブルック”から来るファン達は、彼のショーは彼等が劇場で見た中で最も楽しかったものである事を証明しているものである。
シルバーホーク主要惑星
惑星名: アミティー (Amity)
恒星型: M2V
軌道番号: 2
ジャンプ・ポイント行程日数: 3日
リチャージ・ステーション: ナディール
政治形態: 議会制
政治指導者: レイモンド・リチャーズ首相
コムスター施設: A級
コムスター代表者: ファレル・エーカーフェルズ司教
人口: 2,324,000,000
原生生命%、進化レベル: 30%、哺乳類
2335年以来、自由世界同盟の独立した加盟国家であった“アミティー”は、そのメンバーシップの最初の450年間を繁栄した議論の余地のない工業国家として過ごした。その大都市群――フリーホイール、オックスブリッジ、ルール、そしてストライカーという超巨大都市の島は、ガレオン軽戦車からファーリー・スピーダー、ソンヘイムやフォーウィンズの音楽シンセサイザーと録音機器までのあらゆるものを製造していた。しかしながら、継承権戦争以降、“アミティー”は軍事的な戦場と政治的な戦場の両方になった。
軍事上の前線にあったこの惑星は、敵部隊によって襲撃や攻撃を23回に渡り受けた。そして、ライラ共和国は、この惑星を2回――2837〜2858年の期間と2980〜2982年の30ヶ月間――に渡り占領した。その戦争の初期の戦闘は“アミティー”の工業の多くを破壊し、その後、それらは2858年の最後の数ヶ月間にライラの駐留部隊によって更に略奪された。しかしながら、2863〜2865年の期間中、フィリッパ・マーリック総帥は科学者達のチームを派遣し、住民達がそれらの工場群を完全な生産力を持つものに復旧するのを助けた。今日、この惑星は再びその一般市民達に素晴らしい生活水準を提供する事が可能になっており、実際にプラスの貿易収支を持っている。
しかしながら、この骨折りに感謝をする事はせず、それどころか“アミティー”の指導者達はマーリック一族に次第に批判的になっていき、“自国防衛法”を通過させる先頭に立ち、その仲間の5つの公国で以て“シルバーホーク”として知られている相互防衛連合を結成している。3年前、リチャーズ首相と“議会”議員のチャールズ・スミス卿は全ての中でも最大の急進的な違反を犯している――近隣のライラの惑星“ソラリス”と単独の平和条約を締結する、という。ヤノス・マーリックと防衛大臣のエリン・マクォーリーはその条約が無効のものであると否認しているが、現在の所は“アミティー”や“ソラリス”に対する如何なる種類の攻撃も実行する事を控えている(彼等の支持者達の脆弱な連合がかような動きを支持するのはないであろう事を知っているが故に) しかし、この報復がなかった事は、“議会”議場でのチャールズ・スミスの完全な和平を実現するという叫びを更に大きなものへとしているのであった。
タマリンド公国主要惑星
惑星名: タマリンド (Tamarind)
恒星型: K2IV
軌道番号: 4
ジャンプ・ポイント行程日数: 5日
リチャージ・ステーション: ナディール
政治形態: 直接民主制
政治指導者: オトー・コルティウク
コムスター施設: A級
コムスター代表者: キャサリン・カジダマ司教
人口: 3,562,000,000
原生生命%、進化レベル: 15%、爬虫類
オトー・コルティウク(オトー・ザ・コールド)には独力で失われていた鷹狩りの技術を復活させた功績があるが、その事は“タマリンド”の人民達を激しく憤らせている。彼等は通常ならばその統治者の奇矯さを大目に見られたかもしれないが、戦争により“タマリンド”の経済が混乱を極めている時にはそうはできなかったのである。“アトレウス”から来た使者達によってこの事を突き付けられた際、オトーは、鷹狩りは精神の雄大さにとって重要なもので寛ぐのにまたとない手段であり、“タマリンド”の人民達は彼よりも自分達のビジネスの方に多くの注意を向けるのであれば飢える事はないであろう、と傲岸に返答をしている。そして、この態度は、オトーを自由世界同盟で最も不人気な指導者にしているのであった。彼が首相として再選される可能性は低く、次の選挙前に武装反乱を引き起こす可能性さえもある。
“タマリンド”の芸術家と工芸家達は、伝説的なものである。その繊維・機械製造・食料輸出といった通常の産業は戦争によって引き裂かれてしまっているが、才能のある芸術家達は公国内のより繁栄している惑星群から高い金額を集められる能力を持っているのであった。この事は“タマリンド”の持つ者と持たざる者との差を広げ続ける一因になっており、芸術家達の多くは“タマリンド”の芸術家である事によって自分達が請求できる極上の金額の為だけに“タマリンド”に留まっている。その自らの芸術家達の美しい作品を持つ事ができない事は現地住民達を立腹させている――その芸術家が昔馴染みの隣人であった時は、特に。
惑星“タマリンド”は、かつては美しかった、傷痕がある荒廃した地である。多数行われたバトルメック戦闘は現地の動物相の大部分を殺して、繰り返された爆撃はかつて平原と農場があった場所に塹壕を残し、敵が遮蔽に使用する事を防ぐ為に森林は燃やされたのであった。
独立惑星
惑星名: イリアン (Irian)
恒星型: G5III
軌道番号: 3
ジャンプ・ポイント行程日数: 7.5日
リチャージ・ステーション: ゼニス、ナディール
政治形態: 企業
政治指導者: ジョルジオ・フラッポロ代表取締役
コムスター施設: A級
コムスター代表者: ウィリアム・ムラヘイ司教
人口: 2,169,000,000
原生生命%、進化レベル: 15%、植物
マーリック共和国の丁度コアワード方面に位置している“イリアン”は、その広大なバトルメック製造センターで最も知られている。この大量に駐留部隊が置かれている惑星は1度しか――2842年のライラ共和国によるものしか侵攻を受けておらず、その工場群はその戦闘でも損害を受けないままでいた。
3025年に行われた調査は、自由世界同盟の全ての惑星の中で、“イリアン”の人民達がビデオを視聴する事に他の如何なる惑星よりも多くの1人あたりの時間を費やしている事を示している。そうなっている原因は不明である――そのビデオの技術の質や放映プログラムの多様性のどちらも自由世界同盟の他の場所と比べてそれ程優れている訳ではないのであった。恐らく、その人民達を夏には不活発にし、冬には落ち着かなくさせる“イリアン”の季節の変化が何かを及ぼしているのであろう。もしくは、その環境に催眠性の何かが存在しているのかもしれない。
“イリアン”の地表は、旅行者や開発者のどちらにも余り興味となる様なものを提供はしていない。その丘陵遅滞と山岳地帯の大部分を食用に適さない草が覆っており、その平地の大部分は何らかの価値のある鉱物が極少量しか存在しない砂漠で構成されている。そして、その海と河川は、海産食物に関して少ししか産出しないのである。この惑星の人民達はその食料の大部分を輸入する必要があるという事実にも拘わらず(或いは恐らくそれが原因かもしれないが)、“イリアン”料理は有名なブランドである。
惑星名: ケンダル (Kendall)
恒星型: F9V
軌道番号: 4
ジャンプ・ポイント行程日数: 11日
リチャージ・ステーション: 無し
政治形態: 封建専制
領有貴族: エリザベス・モンカーム女伯爵
コムスター施設: B級
コムスター代表者: アイヴァン・デトコフ司教
人口: 2,172,000,000
原生生命%、進化レベル: 15%、昆虫
この変則的な惑星の環境――この惑星のいびつな偏心軌道は穏やかな季節というものを発生させないようにしている――に、その人民達は不自由なく適応している。ここの優勢的な生物は巨大な移動性の昆虫であり、それは7世紀も前の人類の流入に未だに気付いていない様に見えるものである。それらのクリーチャーはハイヴの様な巣を作っており、それらが移動をした後はそのハイヴは人類の居住に理想的なものであった。しかし、その有機体の巣は崩壊するまでに数十年間を要するものであるが、それは丁度数年間で人類と昆虫の両方にとって不快である臭いを滲み出し始める。従って、彼等は定期的に放棄をしており、それらの巣が作られた地域は1世紀以上に渡り見捨てられる事となる。
このリムワード方面の惑星の主要な産業は農業である――その原産の穀草の品種は“ラハティ”、“ランドフォール”、“ハンティントン”といった近隣惑星のダイエット用食品の必需品である。そして、その大規模な養蜂産業は、蜂に似た原産の昆虫を利用して食料や蜂蜜を製造している。この製品は時折、“地球”蜂の蜂蜜――これも“ケンダル”にて養蜂されている――と組み合わされている。この製品はまた、自分の朝食のテーブルへのこの製品の供給が絶たれるのをカペラの首相が望まなかったが故に第2次継承権戦争より前のカペラの自由世界同盟への侵攻を一度は思い止まらせた、とも言われている。“ケンダル蜂蜜の様に口当たりが良い”という表現は、遥か遠くの外世界同盟にまで広く通じるものである。
“ケンダル”の人民達は常に、自由世界同盟で最も栄養の行き届いている人民である。その惑星の低い重力と合わさり、この事は男性の平均身長を7フィート(約213cm)、女性の平均身長を6.5フィート(約198cm)にまで成長させる原因となっている。
惑星名: テルマンズ・ミステイク (Tellman’s Mistake)
恒星型: F6VI
軌道番号: 2
ジャンプ・ポイント行程日数: 14日
リチャージ・ステーション: 無し
政治形態: 封建専制
領有貴族: ジド・タカシュマ伯爵
コムスター施設: B級
コムスター代表者: ヴァルロン・オデル司教
人口: 3,027,000,000
原生生命%、進化レベル: 20%、哺乳類
辺境共和国からそれ程離れていない辺境近くに位置する“テルマンズ・ミステイク”は、その全ての食肉を輸出している完全な農業惑星である。その名は、2460年に最初の入植地をここに築いたザカライアス・テルマンに因んでいる。テルマンは、良好な土壌と温暖な気候を持ち大型の捕食動物のいないこの惑星は農家の入植地として理想的な地である、と納得させた人物である。
入植者達が到着した時、彼等はこの惑星に小型の蝙蝠に似た吸血性のクリーチャーが蔓延っている事に気付いた。そのクリーチャーの噛み付きは(それによる痛みは瞬間的なものであったが)、その犠牲者の神経を弱体化させる天然の麻酔薬を含んだ唾液を注入するものであった。そのほぼ最初の日から、入植者達は段々と悪化する緩やかな熱病に罹り始めた。これにテルマンは大慌てでその動物標本を集め、血液と組織のサンプルを最も近い病院のある遙か彼方の“レグルス”に送った。その結果を待っている間に、大部分の入植者達は熱病から回復したが極少数は死亡した。そして、自分達がここに留まるかどうかに関する激しい議論が巻き起こった。
しかし、数日を経ずして、熱病から回復した入植者達は自分達が以前よりも頑健で活力に満ちている事に気付いた。数週間後には、噛み付かれた事で死ぬ者は1人もいなくなった。テルマンは、この事は彼等の死が恐らくアレルギー反応の類によるものである事を示しており、生き残った者達にとってこの入植地は安全であろう、と主張した。(その後の)“レグルス”からの実験レポートは、かなり稀な血液型を持っている人を除き、この動物の唾液に含まれている酵素は犠牲者の免疫システムを活性化させ、その消化システムの効率も高める事を示していた。それから6世紀後、入植者の子孫達は尚もこの動物をその薬効成分の為に飼育しているが、それらはこの惑星の動物相の全てと同様に人間の食用には適さないものである。
テルマンのこの入植地に対する信念は、証明され続けている。この入植地が築かれてから1年後、最初の植民地議会はこの惑星を“テルマンズ・ミステイク”と公式に――そして愛情を込めて――名付けたのであった。
惑星名: トレリセーン (Trellisane)
恒星型: G7III
軌道番号: 3
ジャンプ・ポイント行程日数: 6.5日
リチャージ・ステーション: 無し
政治形態: 直接民主制
政治指導者: アンドレアス・アルヴァレス大統領
コムスター施設: B級
コムスター代表者: オチョ・ラーン司教
人口: 3,313,000,000
原生生命%、進化レベル: 15%、哺乳類
“トレリセーン”の人民達は、独特の政治体系を考案している。“エクソダス”の初期に新たな民主主義を探求する、不満を抱いた政治的な国籍離脱者達によって入植された“トレリセーン”は、2世代に渡り猛烈な公共心のある民衆を持ち続けた。しかしながら、そのオリジナルの入植者の末裔達は“地球”の遙か昔の先祖達と同様に程無く自分達の民主的権利と名誉に無頓着になった。この惑星の指導者達を特に苦しめ悩ませたのは、より多くの人民達が自分達の投票が差程の違いは生まないと思った事による、投票率と有権者登録率の両方の年を経る毎の着実な低下であった。そして、投票率が有資格者の50%にまで低下した時、その指導者達は危機を宣言し、驚くべき解決法を導入した。
有権者の数は非常に扱いにくいものになっていた為と、それでも投票は直接民主制の要であった為に、指導者達は「投票資格のある全ての者は法により投票をしなければならない。しかし、成年者は3回の選挙の内の1つしか投票できない」との法令を定めたのである。これに伴い、有権者数はより小さな数となるが、全ての者は政府がどの様な運営をするべきかについて自分達の意見を発する機会が得られる、と。自分達が投票できる次の選挙が2年先のものではなく6年先のものである事を知った為に、遥かに高いパーセンテージの人民達が活発に運動をして問題に関する討論を行った。そして、続いての国民投票は“トレリセーン”の歴史上で最も高い投票者数となったのであった。