ブラックハート・ローゼズ
(BLACK HEART ROSES)


 政略的な結婚により誕生したこのブラックハート・ローゼズは、ヨハン・ローズとサラ・ハート=ローズという夫と妻のチームによって指揮されている。収集癖を持った傭兵部隊であるブラックハート・ローゼズは、戦闘可能状態にある戦闘部隊であると同時にサラ・ハート=ローズ大佐の個人的なバトルメック・コレクションでもあるが、しかし、その指揮官達の結婚の現実はそれらの特性をも危うくしているのであった。
 起り得るであろうマリア帝国からの攻撃に対してニオプス連合の防衛軍を強化する為にその小さな辺境国家によって雇用されたブラックハート・ローゼズは少しの戦闘しか経験しなかった――3071年が始まるまでは。その時、第VI軍団“リパリアンシス”の2個コーホート(注:約2個大隊分の戦力)が、増大しつつあるニオプス連合市民軍からその星間連盟期の装備の備蓄を奪取する事を狙った襲撃に着手したのである。
 ここでブラックハート・ローゼズは、マリアの襲撃者達に貯蔵施設へ接近する事を無抵抗で許した。そして、惑星“ニオプスV”の工業地域の卑金属の峡谷を通って進軍するコーホートの各部隊は一列に伸び、分散してしまった。市民軍の2個中隊に防衛されている貯蔵施設群を発見したオヌフライ・ソパチャク少佐は自分の分散している兵達を攻撃の為に所定の位置に就ける事を試みていたが、その正にその時にブラックハート・ローゼズのバトルメック大隊は彼の縦隊の後方に突撃をした。それから、2つの部隊の間に挟まれて包囲されたマリア人達は周囲の工場群からの砲火に晒された――ブライアー・パッチ護衛隊が隠れ場所から躍り出て眼下の歩兵部隊と車輌部隊に砲撃を浴びせたのである。ここで通信チャンネルに大声で叫び秩序を取り戻す事を試みていたソパチャクは、自機のスタースレイヤーに1個小隊のナイトホークMk.XXIIパワーアーマーが跳躍してきた事にも気付かなかった。そして、単なる歩兵により自分達の指揮官が倒されるのを目撃した生き残りのマリア人達は算を乱して逃走したのである。
 しかし不幸な事に、この戦場での成功はブラックハート・ローゼズにとって結婚の幸福を伴うものではなかったのであった。ヨハン・ローズが平凡な顔立ちのサラ・ハートとの結婚をする気になったのは金銭面からである(彼がサラと彼女のメック大隊と出会った時、彼は重い借金を負っており自分の傭兵歩兵部隊を失う寸前であった)、と広く信じられているものであるが、現在の惑星“ニオプスV”の噂の出所は颯爽としているヨハンと生え抜きのNAM(ニオプス連合市民軍)歩兵士官であるアリシア・カーマイケル大尉について活発に動いているのである。NAMと共に訓練をしているローズは市民軍と自分の傭兵部隊との連絡の為に配属されているその大尉と時間を共に過ごす正当な理由を複数持っているのであるが、彼等の関係がより私的なものになっているとの噂はサラの耳に届いており、かの夫婦は口論や人前での喧嘩が増えつつありそれを何度もしている。彼等の現在の契約が切れるのは3073年末であるが故に、ハート=ローズ大佐がニオプス連合に留まる事を選ぶとは――そして彼女の結婚が大荒れの状態であるのをそのまま続ける事を選ぶとは――とても思えないものである。

ドラグーン・レーティング:

ブラックハート・ローゼズ
 ニオプス連合との契約の一環として、現地の技術者達はサラ・ハート=ローズのコレクションの中にある幾つかの星間連盟期の機体の修復を手助けしている。そして、その元々のスペックにまで修復された第2中隊のサグ、ハイランダー、ブラックナイトは、マリアの襲撃部隊にとって大いなる驚きであった事を証明している。
 第VI軍団“リパリアンシス”との戦闘からの回収物はサラの遺棄物コレクションの中からもう1個中隊分のメックを稼働状態に戻す事をブラックハート・ローゼズに可能にさせている。しかしながら、それらの機体を操縦するのに適格であるメック戦士は不足しており、それらは大隊が必要とする際の交換用の予備機へと転落してしまっている。これらの余分な機体の維持をする財政上の負担は、ヨハンのカーマイケル大尉との疑わしい関係の問題と同じ位にローズの副指揮官達の間での論議の種となっている。

ブライアー・パッチ護衛隊
 ヨハン・ローズの2個歩兵大隊は、そのニオプス連合との関係によって多大な利益を得ている。彼等の雇用主達は第1次星間連盟期から残されている小火器の貯蔵所にアクセスする事を彼等に限定的に許可しており、彼等の多くは先進的なSLDFの武器――この中にはモーゼル960アサルトシステムも少数含まれていた――で以て装備を一新しているのである。そして、ニオプス連合市民軍と共に活動する事は、ブライアー・パッチ護衛隊にその自分達の新装備へ完全に習熟する事を可能とさせたのであった。
 活動中のナイトホーク・パワーアーマーを目撃した後には、ローズはニオプス連合に対してそれらの兵器へのアクセス権も同様に陳情している。そして、カーマイケル大尉の支援により、ブライアー・パッチ護衛隊は2個小隊のMk.XXIIナイトホークとその他に1個小隊の火力強化型のMk.XXIIナイトホークが供給された。マリア帝国が惑星“ニオプスV”を襲撃した時には、ブライアー・パッチ護衛隊のパワーアーマーは砲火の洗礼を受け、そして、襲撃者達の指揮官を抹殺して、その生き残り達を混乱の渦の中に叩き込んだのであった。


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